国立成育医療研究センター(東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)女性総合診療センター女性内科の山口晃史を中心とした研究開発チーム(国立成育医療研究センターの中村秀文、齊藤隆和、久野道、杉山産婦人科の中川浩次、東京医科大学の小野政徳(現・慶應義塾大学)、山梨大学の吉野修、東京大学の廣田泰、昭和医科大学の井上永介)は、既存の治療法による体外受精を行っても妊娠に至らない、免疫が関与する重症不妊症患者さんを対象に、免疫抑制剤である「タクロリムス」を用いた治療の臨床研究を実施し、その安全性と有効性を検証しました。その結果、厚生労働省の第180回先進医療技術審査部会で「安全性が高く有効な治療」と判断されました。
本研究結果は、2026年5月にJournal of Reproductive Immunologyに掲載されました。
表1:全解析対象集団に対する有効性の調査結果
【表1:全解析対象集団に対する有効性の調査結果】

プレスリリースのポイント
原因不明の不妊症により長期間の治療の後に断念し、心身ともに苦しんでいるカップルも少なくありません。研究チームはその問題解決へ向けて2010年頃より研究を開始しました。
不妊症全体の10〜15%に存在する原因不明の不妊症の原因を調査研究したところ、母体の免疫が関与していることを見出しました。
妊娠は母親と父親の両方の遺伝情報をもつ受精卵を認識した上で受け入れるメカニズムがありますが、細胞性免疫が強いことにより受け入れが成立しない状態を改善することが必要であると考え「タクロリムス」を用いた世界初の免疫抑制療法の研究開発を進めました。
良好胚の移植を3回(合計4個以上)しても0%の生化学的妊娠確率であり、さらに細胞性免疫の強い不妊症患者さんを対象として臨床試験を行った結果、1回の治療で約60%の方が妊娠に至りました。
研究概要
2022年8月〜2025年9月までの間、体外受精において既存の治療方法で、良好胚移植3回(合計4個以上)行っても妊娠に至らず、さらに細胞性免疫の強かった18歳から40歳の重症不妊症を対象に、免疫抑制薬である「タクロリムス」の経口投与療法を行いました。

1日2mg(低用量)または4mg(高用量)投与群を、2:1の比率で無作為に振り分け、胚移植の2日前から16日間経口投与しました。主要な評価項目は、胚移植3週間後の臨床的妊娠(胎嚢確認)の有無としました。その結果、妊娠率は、低用量群で 66.7%(95% CI、38.4-88.2)、高用量群で 55.6%(95% CI、21.2-86.3)となり(表1)、「タクロリムス」による免疫抑制療法は、母体免疫が関与する重症不妊症に対して有効であることがわかりました。

引用元:
世界初・不妊症に対する新たな治療方法を開発〜免疫の関与する不妊症に対して「タクロリムス」は安全かつ有効〜(国立成育医療研究センター)