こども家庭庁は、女性が妊娠した際に診療機関で受ける「妊婦健診」の公費負担額が全国平均で11万3647円で、前年比で4000円増えたと発表した(2025年4月時点)。地域でばらつきがあることから同庁は公費負担額について全国一律の「標準額」を示す方針だ。
国に求められる早急な対応
妊婦健診は妊婦が血液や感染症に関する検査や子宮頸がん検診などを出産、分娩するまでに14回ほどに分けて実施するもの。かかる費用の一部が公費で補助されている。残りは自主的に負担する。
同庁は昨年4月、全国1618の市区町村(公費負担の額を明示していない123市区町村を除く)を対象に、妊婦健診でどれだけ公費で負担しているのか調査した。その結果、全国平均で11万3647円となった。2024年の調査では10万9730円(1648市区町村が対象)だった。
今回の調査結果を都道府県別でみた場合、公費負担の平均額が最も高く、手厚かったのは沖縄県で、14万1457円だった。最も低かったのは神奈川県の8万5765円。両県で約5万円の開きがあった。
昨年5月、厚生労働省では「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」が開かれた。事前のヒアリングでは妊産婦等から「公費負担以外にかかる自己負担の額が、少しでも減ることを望んでいる」「想定していたよりも実際に自分で病院側に支払う額が多かった」といった声が寄せられたという。妊産婦らは少しでも金銭的負担を抑えたい思いでいるようだ。それだけ、公費負担に頼ることにもなる。国には早急な対応が求められている。
先行きの収入への不安
とはいえ、こうした健診以前に、現実的に子供を持とうという女性が必ずしも多いというわけではなさそうだ。背景にはこの先、子供を待ち望む夫婦が得るだろう世帯収入の額への不安感があるようだ。
実際はどうか。三菱総合研究所(東京)は独自に「生活者市場予測システム」を活用し、2025年6月2日から7月14日にかけ、20歳から69歳までの男女3万人を対象に「2025年度ベーシック調査」を実施した。具体的に「今と5年後を比較して、あなたの世帯の収入は、どのように変化すると思いますか」と既婚女性に質問したところ、世帯収入が「ほぼ変わらない(3030人)」「多少減っている(1134人)」との回答を寄せた人の8割以上が「5年以内に子供をもうけていないと思う」と答えた。
さらに、今と5年後を比べてみて、収入が「かなり減っている(1296人)」と答えた人のうち「5年以内に子供をもうけていないと思う」と回答した人は9割以上にもなった。
「収入が減っている」と考える人ほど、子供を産もうという考えが薄い結果が出た。こうした結果になった背景には、子供を産むのに一定の費用がかかることへの懸念の声がある。そこで、こうした費用負担がかからないように行政当局は公費を投入し、妊産婦たちを金銭面から支えている。
公費負担額の指標が決まっても...
現状では、医療機関が妊婦健診にかかる費用を設定する際の「指標」がない。医療機関は独自に価格を設定している。こうしたなか、妊婦の自己負担を抑える一環として、公費負担額の地域差を是正する声が強まった。そこで、同庁は公費負担額について「標準額」を定め、各都道府県にはその額に近づけるよう努力をしてもらおうという考えに傾いていった。
ただ、こうした動きに公益社団法人「日本産婦人科医会」(東京)は慎重だ。昨年12月、同会は今後、標準額が算定されると、場合によっては産科病院の診療や経営状況に影響が出かねないとして、算定根拠などについて慎重な対応を国側に求めた。また、仮に標準額を決めたところで、前出のような地域差がただちに解消されることでもないとも指摘した。
産婦人科の現場からも苦慮の声があがる。神奈川県横浜市にある「ショコラウィメンズクリニック」で院長を務める木崎尚子さんは「地域差があることよりも、地域の実情や物価に見合った負担設定になっていないことが課題だ」と語る。
特に首都圏では、医療機関側の運営コストが高い一方で、それに見合う支援になっていないケースがあるという。患者からは日常的に「思ったより費用がかかる」「補助券だけでは足りないのですね」といった声が寄せられるという。妊婦が安心して出産できる環境をつくるためにも、医療機関側への支援も必要だと木崎さんは訴えた。
引用元:
妊婦健診の公費負担、神奈川と沖縄で5万円の開き 政府は全国一律の「標準額」示す方針(産経新聞)