高知県内でお産を扱う施設や産婦人科医が減る中、県立あき総合病院(安芸市宝永町)が4月から、助産師主体の「院内助産システム」を始めた。県内の医療機関では初めて。医師が「リスクが低い」と判断した妊婦が対象で、助産師が妊娠から出産、産後ケアまで支える。初年度は約20件を見込んでおり、同病院は「妊婦さん一人一人とコミュニケーションを取りながら、産前産後も手厚くサポートする」としている。
県内では年々少子化が進み、昨年の出生数は過去最少の3072人(県推計)。産婦人科医の高齢化や減少もあり、お産を扱う病院や診療所も減少。09年は21カ所あったが、現在は10カ所にまで減っている。
こうした事態を受け、県内の産婦人科医や小児科医でつくる「県周産期医療協議会」は24年、対策を協議する検討会を設置した。協議会の議論を踏まえ、県は26年度から、あき病院で院内助産システムの運用を始めることを決めた。
一般的なお産では、医師が妊婦検診を行い、出産時には医師、助産師、看護師が対応する。一方で、院内助産の主体は助産師。あき病院では、妊娠30週目で医師が「リスクが低い」と判断した妊婦が対象。助産師が健診を行い、出産時も複数の助産師が対応する。
□ □
「どんな体勢が楽やろね」「背中の後ろにクッションを置いてみたら? 旦那さんも立ち会うなら、後ろで受け止めてもろうたらいきみやすいかも」
4月上旬、あき病院で、助産師10人が院内助産の研修を行っていた。1人を妊婦に見立て、出産時を想定しながら各自の役割や動き方を確認していた。
あき病院は24年度、院内助産に向けた安全管理体制や妊婦の選定基準の作成に着手。助産師はこれまでに交代で県内外の施設へ研修に出向き、お産の経験を積んできた。
分娩(ぶんべん)室の隣にある陣痛室には、お産用「畳ベッド」を特注で用意した。通常のお産は妊婦が分娩台に固定されるが、院内助産はベッド上で立ったり四つんばいになったり体勢を変えられる。よりリラックスした雰囲気で出産に臨めるという。
これまではお産が長時間にわたる場合、助産師が別の患者に対応するため一時的に妊婦のそばを離れることもあったが、院内助産では助産師3人が付きっきりで対応する。3人はお産の進行を管理し、血圧や脈拍の確認、赤ちゃんの取り上げを行う。医師も院内で待機し、帝王切開などが必要になった場合などは通常のお産に切り替える。
あき病院は、県東部でお産を取り扱う唯一の施設(産婦人科医2人)。年間100人ほどの赤ちゃんを取り上げている。助産師は15人在籍し、うち8人は高度な技術が認められた「アドバンス助産師」だ。
助産師歴15年の米田更織さん(51)は「(院内助産は)助産院の快適さと、病院の安全性のいいとこ取りができる。妊娠中から主体的に妊婦さんに関わることで、状況や体調も分かる。つながりもできて、産後ケアにも生かせる」と語る。
産婦人科部長の池上信夫医師(59)は「院内助産を導入することで、医師はリスクの高いお産に専念できる。高知県は東西に長く、東部にお産の拠点が絶対に必要だ」と強調する。
厚生労働省によると、お産を扱う全国の病院や診療所のうち、院内助産を行うのは10・4%(23年10月時点)。県は今後、幡多地域や県中央部でも導入を検討している。
県医療政策課の宮地洋雄企画監は「助産師の力を借りて医師の負担軽減を図りたい。今後も施設の集約化も含めた必要な対策を考える。県民が安心して出産できる安全な体制を確保したい」としている。
引用元:
助産師がお産主導 高知県内初「院内助産」始まる 産前産後も手厚く支援 県立あき病院〈安芸市〉(WAM NETニュース)