DNA損傷が増え、運動率が低下。最新研究で浮かび上がった禁欲期間の最適解
例えば不妊治療のため、男性がより長くセックスを控えると、精子のパフォー
マンスは低下する可能性がある。
3月下旬、英王立協会の学術誌で英オックスフォード大学が発表した大規模なメタ分析研究によれば、男性の体内に長期間とどまった精子は劣化の兆候を示すことがある。
射精前の貯蔵期間が精子の健康状態や生殖能力に与える影響を理解すべく、同研究は31カ国(対象者は計5万4889人)で行われた研究115件、および動物対象研究56件のデータを分析。
人間の場合、禁欲による貯蔵期間の長期化は、精子の酸化ストレスやDNA損傷の度合いの上昇、精子運動率や生存率の低下と関連することが分かった。
こうした劣化傾向は重要な意味を持つ。精子が卵子に到達し、受精を成立させる能力に影響を与えるからだ。
精子は成熟するとDNAの損傷を修復できなくなり、抗酸化物質を生み出すことが難しくなるため、老化に対して特に脆弱だと、研究は指摘する。
成人男性の精巣は生涯を通じて精子をつくり続けるが、個々の精細胞は貯蔵された途端に老化し始め、時間とともに損傷を蓄積していく。
ただし、より長い期間の精子貯蔵が、受精率や胚の質の低下につながることを示す一貫した証拠は確認されなかった。身体機能(または生殖補助医療)が、一部の精子損傷を補っている可能性を示唆している。
精子の数と質の間に最適バランスが存在する
「精子が受けた悪影響が必ずしも、受精率への悪影響と結び付かないことにはいくつか理由がある」と、研究執筆者の1人で、生物学者のクリシュ・サングビは本誌に語る。
「その1つとして、質の低い精子は寿命がより短い可能性がある。禁欲によってDNA損傷が増加したり、運動率が低下した精子は単に、受精に至る前の段階で死んでいるのかもしれない」
一方、動物対象研究では、受精率や胚の質の低下との関連が認められ、長期的な生物学的影響の可能性を浮き彫りにしている。サングビによると、動物の場合、精子貯蔵が受精率に直接的影響を与えることはより確実だ。
今回の結果は注意深く解釈するべきだと、研究は強調している。精子の質は長期の貯蔵で低下するが、人間の場合、全般的影響は統計学的に「有意だが、わずか」だという。
精子の量は禁欲によって増えることも知られており、精子の数と質の間に最適バランスが存在する可能性がある。
理想的タイミングは目的次第だと、研究は指摘する。より長く禁欲すれば、精子の数は増えても質が低下しかねない。
体外受精で精子サンプル全体を使用する場合は、中程度の禁欲期間が数と質のバランスを取るのに役立つはずだ。良好な状態の精子を1つ選んで卵子に注入する顕微授精などでは、より短期のほうが望ましいだろう。
引用元:
禁欲は逆効果?精子の「ためすぎ」が質を下げる可能性(ニューズウィーク)