妊娠高血圧腎症は妊娠中に発症する、高血圧を特徴とする疾患です。中でも、妊娠34週未満に発症する早発型妊娠高血圧腎症(Eo-PE)は、母親と胎児の生命を脅かす重篤な妊娠合併症であり、母体では、重症化すると血管から水分が漏出して全身浮腫や肺水腫など致死的な合併症を引き起こすことが知られています。しかし、その詳細なメカニズムの解明は不十分で、根本的な治療法は分娩(ぶんべん)によって妊娠を終結させることです。
名古屋大学医学部附属病院の横井暁講師らの研究チームは、細胞の骨格や収縮に関わると考えられているたんぱく質の1つである「LIMCH1」に着目。LIMCH1を含む胎盤由来の細胞外小胞(EV)が、Eo-PEにおける血管からの水分の漏出を起こしている可能性を示しました。EVはヒトのあらゆる体液中に存在し、細胞間コミュニケーションを担う重要な因子として注目されています。同チームは、正常妊婦とEo-PE妊婦の血清からEVを抽出して含まれるたんぱく質の違いを分析。胎盤組織におけるRNAの違いも併せて分析し、胎盤由来のEo-PEで特異的に増加するたんぱく質として、LIMCH1を突き止めました。さらに、マウスを用いた実験で、血管の内皮がLIMCH1を含むEVを取り込むと血管から水分が漏出する性質が高まることを確認しました。
今回の成果は、Eo-PEの重症化予測および治療戦略に新たな指針をもたらすものです。将来的には、LIMCH1を含むEVを新たなバイオマーカーとして利用する他、EV そのものやLIMCH1を標的としたEo-PE治療法の開発も見込まれます。
引用元:
妊娠高血圧腎症の治療につながるメカニズムを発見(ASCII.jp)