重い遺伝性疾患を子どもに受け継がせないための技術として、受精卵の遺伝子を調べる「着床前検査(PGT―M)」がある。2022年に審査の基準が一部緩和され、申請件数が増えている。

【写真】絶望の涙と2度目のがん、夫と決めた着床前検査 審査を待つ女性の思い

 PGT―Mは、体外受精後の受精卵を数日培養した「胚(はい)」から一部の細胞を取り出し、その遺伝情報を調べる検査だ。遺伝性疾患を受け継がない胚を子宮に移植する。

 この技術は胚を選ぶため倫理的な課題がある。日本産科婦人科学会(日産婦)は1998年に「重篤な遺伝性疾患」に限るという見解を発表。成人になる前に、人工呼吸器が必要となったり、命が危ぶまれたりする状態が基準となった。最初に認められたのは04年、対象はデュシェンヌ型筋ジストロフィーだった。

 その後、遺伝性腫瘍(しゅよう)の一つ「網膜芽細胞腫」の申請をきっかけに、見解の見直しの議論が始まった。命にかかわることはまれだが、幼少期に失明する可能性もあり、生活への影響は大きい。

 日産婦はこれまでの基準に「原則」という言葉を加え、22年1月に見解を改定した。

 学会が3月9日に公表したPGT―Mの半年ごとの報告によると、25年1〜6月の申請は24例で、新見解後の累計は148例。年平均で約20件超の申請だった旧見解のときより2〜3倍多い。網膜芽細胞腫のほか、ラブドイド腫瘍好発症候群、リー・フラウメニ症候群といった小児がんを発症する可能性がある遺伝性腫瘍で認められている。

 審査は疾患名で判断しているわけではない。本人や家族の状況、症状の発症時期や重症度などを考慮して、学会が個別に可否を判断している。同じ疾患でも認められる人もいれば、認められない人もいる。

 今後どこまで対象を広げることになるのかは不透明だ。生殖医療は技術の進展とともに、倫理的な課題についても議論を重ねる必要がある。日産婦は学会の枠組みを超えた「公的プラットフォーム」を設置して、幅広く議論しながら生殖医療を進めていくよう、国に提案している。(後藤一也)

引用元:
受精卵の遺伝子調べる「着床前検査」 増える申請、遺伝性がんにも(Yahoo!ニュース)