東京大学とサイオステクノロジー株式会社の研究グループは、子宮蠕動運動のcine MRI画像と臨床情報を統合した妊娠予測モデルを開発した。
体外受精や胚移植を行っても、受精卵(胚)が子宮に受け入れられず、妊娠の成立に至らない「着床不全」は、難治性不妊症の原因の一つである。子宮の蠕動運動(小さな収縮運動)は月経周期によって変動するが、着床の時期に動きが多すぎたり強すぎたりすると、着床の妨げになる可能性が指摘されている。しかし、子宮蠕動運動の評価は、cine MRI画像(連続撮影したMRI画像により子宮蠕動運動を可視化できる)を見た医師の判断に依存するため標準化が難しく、診断や治療方針の決定に活用するうえで課題があった。
そこで本研究グループは、着床不全患者188例を対象に、子宮蠕動運動のcine MRI検査の画像情報と年齢などの臨床情報を統合して解析し、子宮因子に着目して妊娠予後を予測する人工知能(AI)モデルを開発した。
cine MRI画像をそのまま深層学習(DNN)に適用すると、計算コストが高く大量のデータも必要になるため、約18秒分の「子宮の動き」の連続画像を1枚の画像に変換する独自手法を用いて学習・予測を可能にした。さらに、DNNで得られたcine MRIの予測スコアを5つの統計量にまとめ、臨床情報の指標と合わせて統合した機械学習モデル(Random Forest)を構築した。これにより、子宮因子の個人差を予測に反映でき、従来の臨床情報のみを用いた妊娠予測モデルと比べて予測精度が有意に向上することが確認された。
本研究は、cine MRI画像をAIで解析することで子宮蠕動運動の評価を客観化できるとともに、子宮機能の可視化が妊娠予測精度の向上につながる可能性を示した。今後は検証データセットや症例数を増やしてモデル性能を高め、さらに多様な子宮の病態も予測に統合することで、着床不全患者に対する子宮因子に着目した個別化医療の実現や、新たな診断・治療戦略の構築に寄与することが期待される。
引用元:
子宮機能に着目したAIモデルで妊娠予測精度が大幅向上 東京大学が開発(大学ジャーナルONLINE)