早発閉経の「卵胞活性化療法」、全身麻酔手術で体への負担大
順天堂大学は2月9日、難治性の不妊となる早発閉経患者の新しい内服治療薬の開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科産婦人科学の河村和弘教授、佐藤可野助教、および香港大学医学部産婦人科のKui Liu教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Science」にオンライン掲載されている。


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早発閉経は卵巣内の残存卵胞がさまざまな原因により病的に激減し、40歳未満で卵胞発育が停止して閉経する疾患で、自己の卵子での妊娠は非常に困難となる。女性の3.5%に発症するが、確立された不妊治療法はなく、新規治療法の開発が求められている。

研究グループはこれまで、腹腔鏡手術を用いて残存卵胞を活性化し、卵胞発育を回復させる「卵胞活性化療法(IVA)」の開発に成功し臨床応用してきた。しかし、IVAでは全身麻酔下での手術が必要となり、体への負担が大きいことが課題であった。

内服薬治療法開発に向け、FDA承認薬1,297の中から「フィネレノン」を同定
そこで今回の研究では、負担の少ない内服薬を使った治療法を開発することを目的に、すでに安全性が確認され薬として承認されたものの中から、卵胞発育を回復する薬剤を探し、その有効性の確認や作用メカニズムの解析を行った。

今回の研究では、米国食品医薬局(FDA)の承認薬1,297薬剤について、独自に開発した10日齢マウス卵巣細胞を用いて原始卵胞の活性化のトリガーとなるKit ligandの発現上昇をモニターする方法で候補薬剤を探索した。候補の中から、内服薬でかつ安全性が高く十分に薬理学的な特性が解明されている最終候補として「フィネレノン」を同定した。

卵巣機能低下の高齢マウスにフィネレノン投与、二次卵胞と黄体の増加
フィネレノンは非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬で、マウス卵巣はミネラルコルチコイド受容体を発現していることを確認した。マウス卵巣の体外培養においてフィネレノンは原始卵胞の活性化および初期卵胞の発育促進効果を示した。さらに、体外培養した卵巣を腎皮膜下に移植することで、成熟した胞状卵胞まで育つことを見出した。卵巣機能が低下したモデルとして10〜12か月齢の高齢マウスにフィネレノンを直接投与する試験を行った。その結果、週2回3週間の経口投与で、二次卵胞と黄体の増加を認めた。また、6か月齢のマウスに同様にフィネレノンを直接投与し、交配させ観察したところ、対照群に比べ多くの児を分娩した。フィネレノンの安全性をさらに確認するため、フィネレノンを投与したマウスから得られた卵子を体外受精したところ、卵子の成熟と染色体、受精、胚発生、着床、妊娠、分娩、産児数に異常を認めず、分娩した児についても形態、成長、行動に異常は認められなかった。

フィネレノン、卵巣機能低下による間質線維化を解除で卵胞を活性化する可能性
フィネレノンの作用メカニズムを調べるため、10か月齢の高齢マウス卵巣の単一細胞RNAシーケンス解析および細胞間相互作用解析を行ったところ、15種類の異なる細胞集団の存在と、間質細胞が顆粒膜細胞へ向けて最も多くのシグナル発信源であること、フィネレノン処理により間質細胞から顆粒膜細胞へのコラーゲンを介した相互作用が著しく減少し、卵巣のコラーゲン関連タンパクや細胞外マトリクスタンパク量が低下することを明らかにした。さらに、フィネレノンはミネラルコルチコイド受容体の抑制を介してマウス培養線維芽細胞のコラーゲン産生を減弱すること、脂質ナノ粒子封入siRNAを用いた卵巣培養でCol1a1のノックダウンが原始卵胞を活性化すること、他の抗線維化化合物を用いた卵巣培養でも線維化関連遺伝子の発現が低下して原始卵胞が活性化されることを示した。したがって、卵巣機能の低下による間質の線維化は卵胞の活性化を抑制し、フィネレノンはその線維化を解除することで、卵胞を活性化する可能性が考えられた。

早発閉経患者14人対象、探索的臨床試験実施
動物試験によりフィネレノンの有効性、安全性、作用機序が明らかとなったため、共同研究グループは卵巣機能が低下して卵巣の線維化が進行した早発閉経患者を対象として探索的臨床試験を行った。ガイドラインに従って診断した14人の早発閉経患者にフィネレノン(20mgを週2回)を投与し3〜7か月間経過をみた。薬剤を投与しながら毎月1回超音波検査を行い、胞状卵胞が確認できた場合はフィネレノンを中止し、卵巣刺激のための薬剤を投与した。卵胞が成熟した段階で卵子を成熟させる薬剤を注射して採卵し、体外受精を行って受精卵を凍結した。さらに採卵を希望する患者はフィネレノンを再開し、同様のプロトコールで採卵を継続した。

すべての患者で卵胞発育、患者あたり平均5.7個の胞状卵胞を確認
その結果、すべての患者で卵胞発育が認められ、患者あたり平均5.7個の胞状卵胞が確認された。13人が卵巣刺激を受け、8人の患者で合計20個の成熟卵胞が育ったが、3個は排卵したため17個の卵胞から採卵を行い、12個の卵子が得られた。12個中9個が成熟卵子であり、4個は3人の未婚患者の卵子であったため受精させずに凍結保存した。最終的に、既婚患者はそれぞれ1個の受精卵を凍結保存することができた。

フィネレノン以外の候補薬剤も研究を進行、安全かつ最も有効性の高い薬剤探索に期待
今回、研究グループは従来確立された不妊治療法がない早発閉経の新たな内服薬を開発した。今後は体外受精において、より多くの卵子が採卵できるよう探索的臨床試験で実施した卵巣刺激のプロトコールを最適化し、国際多施設共同試験によりさらなる有効性の検証を行う。また、フィネレノン以外の候補薬剤もまだ多く残されており、研究を進めることで安全かつ最も有効性の高い薬剤を見つけ出せることが期待される、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

引用元:
早発閉経、内服薬「フィネレノン」の不妊治療法の可能性−順大ほか(医療NEWS)