朝起きたときに指のこわばりを感じたり、指先に力が入らなかったりすることはありませんか? 更年期に起こる手指のトラブルの原因は、女性ホルモンのエストロゲンの減少が大きく関与すると考えられています。今回は医師の粒来 拓(つぶらい・たく)先生に、婦人科医の観点から手指の不調(メノポハンド)の原因や対策について教えていただきました。
更年期に多くみられる手のトラブル「メノポハンド」
※画像はイメージです
更年期にさしかかるあたりから、こんな手のトラブルが見られませんか?
□指がこわばり、スムーズに動かせない
□指が痛い、または違和感がある
□指が痛くてものをつかめない
□指に力が入らず、ペットボトルのフタが開けにくい
□包丁などの調理器具を持つのがつらい
□指がしびれる
□関節に腫れや変形が見られる
手指のトラブルの病気はいくつかありますが、これらの不調が更年期頃から増えてきたのであれば、「メノポハンド」かもしれません。このメノポハンドとは、女性ホルモンのエストロゲンの減少による手指の不調の総称で、「メノポーズ(更年期)」と「ハンド(手)」を組み合わせた造語です。2022年に日本手外科学会によって提唱された新しい概念なので、まだ耳なじみがないと思いますが、近年広がりつつあります。
原因は、エストロゲンの減少による「滑膜」の炎症
※画像はイメージです
関節には関節の動きをなめらかに保つ「滑膜」という組織が存在しています。この滑膜は、関節液を分泌し、摩擦を減らす役割を担っています。ところが更年期になると、女性ホルモンのエストロゲンの減少によって滑膜のうるおいが失われると、動きが悪くなったり、痛みが出たり、炎症が起きやすくなったりするのです。
関節はひざ、ひじなど、体のあらゆる部分に存在していますが、とくに手指のような小さな関節は影響を受けやすく、朝は手のこわばりや痛みを感じます。症状が進むと関節が腫れ、指が曲がってくることもあるため「関節リウマチかしら?」と発想する方もいるでしょう。もちろん、メノポハンドと決めつけずに検査してもらうことも大切ですが、実際に検査をすると更年期由来の手のトラブルだった…ということが少なくありません。
「メノポハンド」と呼ばれている手のトラブルには、主に以下のようなものがあります。
●ヘバーデン結節
親指以外の第1関節が変形したり、はれたり、結節というこぶができる疾患。ものがつかみにくくなります。
●プシャール結節
親指以外の第2関節が変形したり、はれたり、結節というこぶができる疾患。関節の場所は違いますが、症状はヘバーデン結節とほぼ同じです。
●ばね指
指をよく使う人に現れる炎症で、簡単に言うと指の腱鞘炎です。指の腱の周囲に炎症が起き、指の曲げ伸ばしがスムーズにいかなくなります。無理に伸ばそうとするとカクンとばねのように指が跳ね上がります。
●手根管症候群
手首にある「手根管」の中を通る正中神経が圧迫されることで起こる炎症。人差し指や中指のしびれが初期症状のサインです。進行すると薬指や親指までしびれや痛みが起き、細かい作業がしづらくなります。
●ドケルバン病
手首と親指側に起こる腱鞘炎。とくに親指を動かしたときに痛みが出やすくなります。
●母子CM関節症
親指の付け根あたりにある「CM関節」という部分に、変形や痛みが出ます。ビンのふたを開けるときなど、親指を使うときに痛みが出やすいです。
これらの症状は個人差があり、すべての人に起こるものではありません。ただ、一部の症状は遺伝的な影響も指摘されているので、もし、自分の母親が更年期に手指の痛みや不調を訴えていた記憶がある人で、自身も手指に違和感があるなら、メノポハンドの可能性も視野に入れて婦人科や整形外科を受診しましょう。
婦人科的アプローチでもメノポハンドをケア
※画像はイメージです
「メノポハンド」は、女性ホルモンの減少が大きく関与するため、婦人科では昔からよく知られている症状ですが、基本的な治療は整形外科となります。しかし、整形外科では、とくに関節リウマチなどの病気でなければ治療が限定的な場合もあります。そこで重要なのが婦人科的なアプローチです。
日本手外科学会が「メノポハンド」の提唱を始めた背景には、更年期から増える手指の違和感は整形外科的なケアだけでなく、婦人科的なアプローチも加えていくことが必要だ、という考えが広まりつつあるからでしょう。婦人科での治療には以下のようなものがあります。
●HRT(ホルモン補充療法)
少なくなってきた女性ホルモンを補うことで関節の炎症や痛みを緩和します。
●漢方薬
関節の痛みをやわらげる漢方を服用するのも効果的です。
・桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)
血の滞りを緩和する「桂枝茯苓丸」と、末梢の炎症を改善し、血行不良による関節痛をやわらげる「ヨクイニン」(別名:ハトムギ)が一緒になった漢方。血のめぐりを改善することで末梢の炎症を取り除く効果があります。
・桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
体を温めて血行を促します。「附子(ぶし)」という生薬が含まれており、関節や神経の強い痛みを抑える効果が高いのが特徴です。冷えがあり、雨の日に痛みが強くなる、むくみやすい方に有効です。
・疏経活血湯(そけいかっけつとう)
関節痛や神経痛などに使われる漢方薬。血行を促進し、痛みやしびれを改善します。メノポハンドに限らず、主には「下半身の症状」に重点を置いた漢方薬です。
・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
こちらも主には下半身の水が滞りやすい、むくみがある方に向く漢方です。水分代謝を整えることで、関節の腫れや痛みを緩和します。
●エクオールのサプリメント
関節のトラブルに効果的といわれているのが「エクオール」を含むサプリメントです。大豆イソフラボン由来の成分でエストロゲン様作用があり、関節痛やこわばりの緩和などに効果的です。サプリメントでありながら更年期における関節痛を緩和するエビデンスが多数あります。
忙しい女性こそ意識的に「手を休める時間」を
※画像はイメージです
整形外科を受診しても、場合によっては「手を使いすぎないように」「安静にしましょう」といわれることもあると思います。手の痛みは、体からの「少し休んで」というシグナルかもしれません。
しかし、家事や仕事、子育てに介護と忙しい更年期世代の女性にとってそれは現実的には難しいもの。もし、ビンやペットボトルのふたを開けるのもひと苦労、包丁を持つのもつらい…。そんなときは家族に助けを求めることも大切だと思います。
自分のためだけでなく、家族のため、周囲のためにがんばっているからこそ、早めのケアが必要です。忙しい日々でも手の痛みを放置せず、整形外科と婦人科の両方に相談することが、健やかな更年期を過ごす第一歩になります。
※ 更年期の症状の感じ方、対処法は人それぞれ異なります。ご自身の体調に不安がある場合は、早めに医療機関を受診してください
引用元:
更年期の女性に多い「へバーデン結節」に「ばね指」。手指のこわばりや痛みを感じたら要注意:医師が解説(Yahoo!JAPANニュース)