寒くなって夏のように汗をかかなくなり、水分の摂取機会が減るのがこの季節だ。乾燥が進む中で、水分摂取はウイルス感染の抑制やヒートショックのリスクの低減などの効果は少なくない。
枕元に水を用意してもいい
枕元に水を用意してもいい
◇最低1日1200tの水分補給
「冬はどうしても積極的に水分を摂取する機会は減ります。しかし、乾燥した外気や暖房の中で思ったより皮膚から水分は蒸散しているので、その補給は必要です」
脱水症に詳しい済生会横浜市東部病院の谷口英喜医師は、こう呼び掛ける。谷口医師によると、冬場でも気が付かない形で1日に汗で100t、汗以外の皮膚からの蒸散で900tは発散している。これに排尿などの形で対外に排出される水分の分が加わるため、最低で1日1200tを目安に水分補給が必要という。
◇ヒートショック対策も
食事でも相当量の水分は補給されるが、夏場に比べてこの食事に思わぬ落とし穴がある。谷口医師は「夏は水分量の多い葉野菜などが多いが、冬は逆に水分量の少ない芋や大根などの根菜が増え、相対的に食事から摂取する水分量が減少する傾向がある」と指摘する。また寒さが厳しくなると、お茶やコーヒーなど温かい飲みのものが好まれるが、夏場の麦茶やアイスコーヒーに比べて1杯の量が少なく、総量として摂取する飲料の量が減ってしまうことも注意が必要だと強調する。
さらにこの時期、忘年会など飲酒の機会が多くなる。アルコールは利尿作用がある上、体内で分解される際に多くの水分を必要とする。飲酒時には最低でも同量の水分を摂取することが重要だ。
「寒暖差による心臓まひなどのヒートショックも、体内の水分量が安定していないことが一因。特に近年、心不全や糖尿病で体内の水分を排除する傾向のある治療薬も増えており、服用している患者は主治医とよく相談して水分摂取に心掛けてほしい」と話す。
谷口医師
谷口医師
◇ウイルス感染予防
水分補給を怠れば、体内の水分量は減少し、相対的な乾燥状態になってしまう。「夏場の脱水症を伴うような熱中症は起こらないが、インフルエンザやノロウィルスに対する免疫効果を低下させてしまう恐れも生じてしまう」(谷口医師)。
人間の免疫活動はウイルスが侵入する口や鼻腔(びくう)の湿度に左右され、乾燥していればそれだけ免疫活動は相対的に弱くなる。特に夏場に流行する細菌類と違い、ウイルス類は乾燥した環境を好むのでなおさらだ。免疫反応の中核を担う小腸も水分を得ていないと活動が鈍り、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)も乱れるので、免疫機能が働かない可能性がある。
◇小児は急性の脱水症状の危険
一方、水分を多く摂取すると、夜中のトイレが気になる。これに対し、谷口医師は「尿をためるぼうこうは寒さに弱くて収縮しやすい。就寝前はできるだけ温かい飲み物を少しずつ飲んだ方がよい」とアドバイスする。
インフルエンザやノロに感染した小児は、高熱や下痢、嘔吐(おうと)ですぐに急性の脱水症状に陥る可能性がある。高熱や下痢の場合は経口補水液をできるだけ飲ませ、必要なら医療機関を受診して点滴の形で水分補給する必要がある。(喜多壮太郎)
引用元:
乾燥する季節、欠かせない水分摂取 〜感染症対策にも有効〜(時事メディカル)