加齢による妊娠率低下を懸念し健康な女性が卵子を凍結、将来の妊娠に備える動きが広がる。東京都や山梨県が費用を助成。ただ妊娠を保証するものではなく、時期の先送りには高齢出産のリスクも伴い、熟慮が求められる。

 
 ▽価値観次第

 都によると2023年度以降、4千人超の女性が費用助成を申請。アンケートでは凍結の理由として「子どもを欲しいと思えるパートナーがいない」「将来への不安」「仕事で今は妊活できない」などが挙げられた。
 年間300人以上の卵子凍結を手がける東京都渋谷区の「はらメディカルクリニック」は説明会を定期的に開催。加齢による妊娠率低下や排卵誘発剤の副作用、妊娠高血圧症候群といった高齢出産のリスクなどを2時間にわたって説明した担当者は「妊娠を保証するものではなく、不確実性が高い。凍結するかしないかは皆さんの価値観次第です」と締めくくった。
 費用は採卵数などで異なり、1回当たり6〜10個で約30万円、11〜20個で約33万円(凍結費用別)。採卵時18〜39歳などの条件を満たせば初年度に上限20万円、次年度以降は2万円ずつで最大計30万円が助成される。
 
 同クリニックによると、卵子を凍結する女性の年齢層は24年で34歳以下28・8%、35〜39歳55・8%、40歳以上15・5%。21年以降でみると、採卵を複数回実施した人が3割近くを占める。凍結を3年以上継続した後、使用するため融解した人は14・5%。体外受精した人の半数が妊娠した。

 クリニック側は「費用対効果の観点から有効な上限年齢は36歳。38歳以上では勧めない」とするが、結果にかかわらず「今できることをしたい」と希望する女性も。意思決定支援外来では心理学に詳しい産婦人科専門医が相談に応じている。
 ▽啓発が重要
 卵子凍結を巡っては、千葉県浦安市が15〜17年度に順天堂大浦安病院との共同研究として補助金を支出。計34人が卵子を凍結した。21年までの無償保存期間中に卵子を使用し、出産したのは1人だが、自然妊娠や通常の体外受精で赤ちゃんを授かった女性が相次いだ。

妊娠に関する知識啓発の重要性を訴える菊地盤医師=横浜市中区
 説明会に参加して「年齢的に早い方がいいと考えるようになった」といった声が複数寄せられ、研究に携わった菊地盤医師は「プロジェクト全体として行動変容につながった」と評価する。

 妊娠に関する知識を若い頃から身に付け、ライフプランの中で必要なら卵子凍結を考えるのがあるべき姿だとし「選択は本人の自由意思でなければならず、30代後半になって焦らないためには性教育を含めた啓発が何より重要だ」と強調する。
 ▽「いちるの望み」
 都内の別の不妊治療クリニックに勤める杉江美穂医師は22年、31歳で卵子を凍結した。当時は総合病院勤務。当直などで多忙な中、生理周期が乱れるなど将来の妊娠に不安を抱いていたが、専門医の研修を優先せざるを得なかった。
 採卵に向けて通院する負担や卵巣刺激による体調不良が大変だったのに加え、職場にどう伝えるかも思い悩んだ。経験を周りに話すと、女性は皆、興味を持つという。
 卵子凍結は時間稼ぎにはなるが、問題は社会のひずみにあると捉える。男性中心の社会構造の下、キャリア形成と出産・子育ての二者択一を迫られる女性は多い。
 「自分にとって卵子を凍結できたのはよかったし、後悔はない。これで安心とはいえないが、いちるの望みになった」と語る杉江医師。その上で「卵子を凍結するかどうかにかかわらず、子どもとキャリア形成をてんびんにかけずにすむ社会に変えていくべきだ」と訴えた。(共同=若林久展)

引用元:
将来の妊娠に備え卵子凍結 健康女性、先送りリスクも 一部自治体が費用助成(47NEWS)