国がめざす標準的な出産費用の無償化にむけて、制度設計の議論が進んでいる。厚生労働省の専門家部会では、分娩(ぶんべん)費を全国一律とする案が示された。この案に対し、収益を確保できなくなった医療機関の撤退や、医療機関の収入増につながる帝王切開の増加につながる、といった懸念が出ている。
「個々の分娩に対する我々の努力が配慮されず、極めて乱暴で受け入れられない」
日本産科婦人科学会の常務理事で、厚労省の部会に専門委員として関わる亀井良政・埼玉医大教授は6日の会見でこう批判した。
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出産の保険化の影響について会見で説明する日本産科婦人科学会の幹部=2025年12月6日、東京都内
分娩費用は基本単価で全国一律 厚労省案
現在、正常な出産は公的医療保険の対象外で、各医療機関が価格を設定できる。出生数の減少や物価高、賃上げの影響で、出産費用が上昇している。そこで、国は、いわゆる「保険化」によって、分娩費用の価格を国が決めて、妊婦の経済的負担の軽減を図ろうとしている。
厚労省の4日の部会で示された案では、全国一律の「基本単価」を設定し、自己負担は求めない。そのうえで、帝王切開など保険適用となっている施術は、原則3割負担で上乗せする。お祝い膳やエステなどのサービスは全額自己負担とする。
亀井さんによると、基本単価を「55万円」や「60万円」とする具体案が検討されているという。だが、人件費や物価などが高い東京などの都市部では、60万円でも医療機関は赤字が避けられない。経営難からお産をやめる医療機関が増える可能性があると指摘する。
地域のお産を担っている産科施設の撤退が相次けば、大学病院など高度な周産期医療を担う病院にしわ寄せがいく。妊婦と新生児を守る「最後のとりで」として、本来はリスクの高い妊婦に対応しなければならない。
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出産にかかる費用のイメージと課題
高度周産期医療の破綻、民間病院淘汰のおそれ
同学会理事長の万代昌紀・京都大教授は「すでに周産期の高度医療は手いっぱい。一般の妊婦への対応が増えると、高度医療が破綻(はたん)せざるを得ない状況になる」と話す。
引用元:
出産費用「無償化」で産科撤退や帝王切開の増加も 政府案に学会懸念(朝日新聞)