今冬のインフルエンザは例年より早い時期から流行が拡大している。主な流行株はA香港型(H3N2)で、この型は重症化しやすく、ワクチンの効果が得にくい傾向があるため、医療機関には大きな負担がかかっている状況だ。そのような中、弘前大学と京都大学、大正製薬の共同研究チームが、健康診断のビッグデータを活用してインフルエンザにかかりやすい人の特徴を五つのタイプに分類した。
◇発症リスク3.6倍
研究チームは、弘前大学が青森県弘前市で実施している「岩木健康増進プロジェクト健診(IHPP)」のデータを活用した。この健診は2005年から実施しており、20歳以上の住民約1000人を対象に、血液検査や生活習慣、職業、既往歴、体組成など3000項目以上のデータを収集している。
今回の研究では、人工知能(AI)を活用してインフルエンザにかかりやすい要因165項目を抽出し、その関係性を分析した。解析結果から、インフルエンザにかかりやすい人の傾向として@血糖値が高めA肺炎の既往歴ありB多忙・睡眠不足C栄養不良Dアレルギーがある―の五つの特徴があることが分かった。
このうち血糖値、肺炎、睡眠に関する三つの特徴を併せ持つグループでは、それ以外のグループと比べてインフルエンザの発症リスクが約3.6倍にも達することが明らかになった。
インフルエンザになりやすい人の特徴と予防策
インフルエンザになりやすい人の特徴と予防策
◇食事や部屋の温湿度に注意
感染症に詳しい立川パークスクリニックの久住英二院長は、研究結果を踏まえ、血糖値が高めのタイプには、血糖を急激に上げないため、白米よりも雑穀米や玄米など食物繊維の多い主食を選んだ上で、食事は野菜、たんぱく質、炭水化物の順に摂取することを提案する。1日15〜30分のウオーキングなど軽い運動を習慣にすれば、血糖コントロールと免疫維持の両面で効果が期待できる。
肺炎の既往があるタイプは、呼吸器の粘膜を守ることが重要で、その対策として久住院長は深呼吸やストレッチを推奨。「横隔膜がしっかりと伸び縮みして空気が肺の隅々まで入りやすい状態にしておいたりすることはメリットがある」と語る。横隔膜だけでなく、肋間筋や肩周りの筋肉も呼吸に関係するため、これらをほぐしておくことが重要だ。肩凝りで筋肉が硬くなっている人は呼吸が浅くなりがちで、気道に病原菌が残りやすくなるという。
また、低温や乾燥は鼻詰まりの原因になる。室温は20度前後、湿度は40〜60%に保つことが重要だ。エアコンを使うと空気が乾燥するため、久住院長はヒーターで温めた空気を水で湿らせたフィルターに当てて加湿する「ハイブリッド式加湿器」の利用を勧める。自身も使用しているといい、「電気代がそんなにかからず、かつ部屋が少し暖かくなる」と話す。
多忙・睡眠不足のタイプには、タウリンやグリシンを含む食材の摂取、就寝1時間前からのデジタル機器の使用中止、寝室の照明を暗くするなどの環境整備が推奨される。睡眠時間は7時間が理想で、短い場合は昼に15分の仮眠を取り、体をリセットするのも効果的だ。
栄養不良のタイプは毎食、主食・主菜・副菜をそろえることが基本となる。5色の野菜・果物を意識し、良質なたんぱく質を毎食取り入れることで、免疫細胞が働きやすい環境を整えられる。アレルギー体質のタイプには、青魚に豊富に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)・ドコサヘキサエン酸(DHA)を週2〜3回取り入れるとともに、抗酸化力の高い食材を積極的に摂取することが勧められる。鼻詰まりがある場合は、温湿布や入浴で血流を促進するのも有効だ。
◇自宅検査キット活用を
高熱などの症状が出てインフルエンザの感染が疑われる場合、久住院長が強調するのが自宅での検査キット活用だ。検査のタイミングについては「ウイルスが増殖して、ある程度排せつされるようになるまで10時間ぐらいかかる。それからの方が検査結果が出やすい」と説明する。朝起きてすぐに熱があっても、夕方まで待ってから検査する方が精度が高い。ただし、「朝に検査して陰性だったら夕方に検査するという二段構えもあり」という。
検査キットの選び方にも注意が必要だ。「性能が担保されていない研究用の製品が安く売られていることがある。承認されている製品の方が信頼性が高い」と久住院長。検査が陰性で症状もそこまでひどくない場合は、普段使っているような市販の風邪薬で対処することも可能だ。
◇軽症なら市販薬で対応
解熱剤については、最も安全性が高いのがアセトアミノフェンという成分で、子どもや妊婦も使える。久住院長は「市販の風邪薬の多くがアセトアミノフェンを使っているので、そういったもので熱や痛みを抑えて様子を見ていただくといい」と推奨する。
自宅検査で陽性が出た場合でも、必ずしも医療機関を受診する必要はない。久住院長は「病院に行くとタミフルなど抗ウイルス薬が処方されるが、その効果は熱が1日半ほど早く下がることと、高齢者でインフルエンザ後に続発する肺炎を少し予防してくれること。熱がそこまで高くなく、体もそんなにきつくない場合は、わざわざ病院に行ってタミフルをもらう必要はない」と説明する。
軽症のインフルエンザであれば、一晩ぐらいで熱が下がることも珍しくない。熱が下がって丸1日ほどたてば、他の人に感染する恐れはほとんどないものの、せきや鼻づまりなどの症状は、ウイルスで傷付いた粘膜が再生されるまで1週間から12日ぐらい続くという。
◇肺炎の可能性も
一方で、すぐに医療機関を受診すべきケースもある。久住院長は「症状がかなりきついのにインフルエンザでもないという場合、肺炎が隠れていることが結構ある。進行が早い肺炎だと1〜2日で亡くなってしまうこともあるので、医療機関で再検査したりレントゲンを撮ったりして原因を探る必要がある」と警告する。(江川剛正)
引用元:
インフルエンザにかかりやすい五つの特徴 〜高血糖や肺炎既往歴など、データで分析〜(時事メディカル)