長野県立木曽病院(木曽町)は2026年4月から分娩(ぶんべん)(出産)の取り扱いができなくなる見通しを示している。麻酔科の常勤医を確保する見通しが立たず、緊急の帝王切開などへの対応が難しくなることが主な理由。さらに小児科医の負担軽減で26年度の夜間休日の小児科外来は、当直医が他病院の支援を受けながら担う形に。出産に加えて小児科の夜間休日対応も課題で住民からは不安の声が上がる。

【地図】分娩機能を停止する木曽病院と、周辺の病院の位置。地域で出産できる施設がなくなる

■苦渋の決断
 「木曽で子どもを産んで育てたいと思っている。どうすればいいのか」。木曽町の主婦の女性(28)は悩みを口にする。女性は夫の仕事の都合で昨年、町内に引っ越した。30歳になる前に子どもがほしいと夫婦で話している。
 木曽病院は現在唯一、木曽地域で出産に対応している施設。分娩数は少子化もあって年々少なくなっており、19年度の73人から5年後の24年度は45人になった。こうした事情からも人材や設備など今以上の医療資源を投入することは困難とする。
 木曽病院が出産の取り扱いができなくなる見通しを明らかにしたのは今年2月。浜野英明院長が町内で開かれた木曽医療圏地域医療構想調整会議で説明した。浜野院長は当時の取材に「苦渋の決断」と述べた。常勤の麻酔医がいなければ安全安心な出産が難しくなるからだ。
 すぐさま木曽病院の「分娩機能維持」を求める声が広がり始めた。大桑村、安曇野市、池田町などの女性市町村議のネットワーク「信州女性議員の会」は署名活動を展開。3月には、分娩維持などを求める2千筆以上の署名を県に提出した。

■「移住も真剣に考えないと」
 木曽病院は出産の取り扱いができなくなる26年度以降も、引き続き妊婦健診や産後ケアを受ける。出産については、松本市や伊那市、岐阜県中津川市の病院が担うことになるとみられる。
 「最初の出産は分からないことだらけで不安」と木曽町の女性。「病院が近い方が精神的にも安心できる。今後も分娩の取り扱いが難しいのであれば、年齢のこともあるので、医療体制がしっかりしている場所へ移住することも真剣に考えないといけない」と打ち明ける。
 木曽病院の出産の取り扱い休止方針を受け、木曽町は自宅から分娩施設まで30分以上かかる妊婦らを対象に、妊婦健診に自家用車を使った場合1キロ当たり30円を補助し、さらに地域外の病院で出産する宿泊費としても1泊1万1千円を上限に最大14日分を支援する対応を取っている。

■出産に続いて小児科も…
 木曽病院では小児科も厳しい状況にある。夜間休日の小児科診療は年間を通して小児科医2人が待機する態勢。ただ、医師の働き方の観点から今後も同じ態勢を続けることは難しい。浜野院長は7月の住民向け説明会で26年度から小児科の時間外受診が難しくなると明らかにした。
 その後、木曽病院や信州大、県などで構成する会議が発足し、8月にかけて議論を重ね、対応を検討。木曽病院は夜間休日の外来診療は、病院の当直医が対応し、必要に応じて伊那中央病院(伊那市)の小児科医に相談する仕組みをつくり、受け入れを続ける方針を示している。
(藤森未知也)

引用元:
出産も小児科も…山間地の医療体制縮小に不安の住民「移住も考えないと」(Yahoo!ニュース)