想定を超える少子化が進行する中で、小児、周産期医療提供体制を確保するために「小児医療機関、産科・産婦人科医療機関の集約化、大規模化」や「病院−クリニック連携の強化」を進めるとともに、地域住民の医療へのアクセス確保にも配慮する必要がある—。

こうした議論が「小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ」(地域医療構想及び医療計画等に関する検討会、以下「小児・周産期WG」)で、こういった議論が始まっています。2030−35年度の「第9次医療計画」を念頭に置いて議論を進めますが、「想定よりも早く少子化が進んでいる」点を重視し、本年度(2025年度)末に一定の意見とりまとめを行い、各種施策に活かしていきます。

医療機関の集約化を進めるが、地域住民の医療アクセス確保にも留意せよ
Gem Medでも繰り返し報じているとおり「少子化」が想定を超えるペースで進んでいます(関連記事はこちら)。


出生数・出生率は減少・低下の一途をたどっている(小児・周産期WG 251001)



出生数の減少は、産科・産婦人科等の分娩取り扱い施設にとっても、小児科医療機関にとっても「患者数の減少」を意味し、これは「経営難」に直結する問題です。医療機関も霞を食べて暮らすことはできないため、「経営を維持できない」のであれば「規模の縮小や撤退」を考えざるを得ません。

一方、国民にとっては「身近な医療機関でお産ができない、子どもが医療を受けられない」ことになり、こうした状況が「さらなる少子化を招く」ことも懸念されています。

そこで小児・周産期WGでは、小児医療・周産期医療体制の今後について、次のような点を議論していく方針を固めています。

【小児医療】
▽需要の多い「小児1次医療」を安心して受診できる環境を整備するため、▼小児科医と内科医等との連携▼小児科クリニックが少ない地域における「病院小児科」の一般診療への参画▼オンライン診療や♯8000(子ども医療電話相談事業)—などの取り組みを組み合わせて医療提供体制を維持していくことを検討する

▽症例数も減少する中、地域ごとに必要な質の高い小児専門医療と入院医療の提供体制を維持するため、「小児医療圏ごとの集約化・重点化」が必要ではないか。地域の実情に応じた医療機関の役割分担と連携を推進するため、医療計画における各医療機能についての考え方を整理し、第9次医療計画に向けて具体的な施設のあり方を見直す

【周産期医療】
▽これまでハイリスク妊産婦に対応するため、周産期母子医療センターを基幹とした集約化と役割分担を進めてきたが、「ハイリスク以外の妊産婦を含めて、周産期医療圏を柔軟に設定しつつ、医療資源の集約化と妊婦健診や産後ケアを含めた施設間の役割分担」が必要

▽無痛分娩について、安全な提供体制を整備するための課題の整理と、医療従事者の連携のあり方を議論する

▽出生数減少等を踏まえて「周産期母子医療センターの整備のあり方」を検討する



上述のように「小児、産科・産婦人科医療機関の経営を維持する」ことのほか、個々の医師をはじめとする医療従事者の働き方改革のために、「施設の集約化・重点化」をさらに進めることが重要と考えられます。ただし、集約化・大規模を進める場合、地域住民の「医療へのアクセス」が難しくなります。この点については「オンライン診療」や「電話相談」などを充実させるほか、子ども家庭庁による「遠方の分娩施設受診にかかる交通費・宿泊費補助」などが重要になってきます。


患者の医療アクセス確保に向け通院・宿泊費補助も検討されている(地域医療構想・医療計画検討会3 250827)



前者の小児医療提供体制については、医療計画の中で▼一般小児医療(1次医療を担当)▼小児地域支援病院(1次−2次医療を担当)▼小児地域医療センター(2次医療を担当)▼小児中核病院(3次医療を担当)—という体系的な整理がなされ、各都道府県で「中核病院として●●病院を指定する、地域医療センターとして◆◆病院を指定する」といった取り組みが進められています。


医療計画における小児医療提供体制整備イメージ



ただし、滝田順子構成員(日本小児科学会会長)は、こうした体系と「小児科学会による分類」(地域振興小児科B、地域振興小児科A、地域小児科センター、中核病院小児科)とを比べると、相当の齟齬があり、名称も類似しているため、両者の整合性を取るための整理を行う必要があると強調(学会からも、より分かりやすい小児医療提供体制の分類案を再提案する予定)。


「医療計画における小児医療提供体制」と「小児科学会による分類」との比較



あわせて、集約先となる「中核施設」に対する財政支援、稼働ベッド数の柔軟な運用、医師常勤枠の増設などの要望も行っています。

関連して、▼小児科学会の分類に加えて、小児へのプライマリケアを提供酢する施設(小児科クリニックなど)の位置づけも明確化すべき。あわせて高次施設から下位施設への流れも強化していく必要がある(佐藤好範構成員:日本小児科医会副会長、M口欣也構成員:日本医師会常任理事)▼小児・成人の混合病棟は小児患者にとって好ましくなく、考え方を整理していく必要がある(井本寛子構成員:日本看護協会常任理事)▼小児医療・周産期医療で別個に集約化が進むと、小児医療はA病院中心、新生児医療はB病院中心など、ちぐはぐな医療提供体制となってしまう。小児医療・周産期医療の双方が連携して集約化を進めることが重要である(三浦清徳構成:日本産科婦人科学会 常務理事)▼例えば「内科医が小児患者もしっかり診る、学校保健にも携わり、重症患者を見逃さず、速やかに小児科の専門医へつなぐ」といった視点も重要であろう(内田寛治構成員:日本麻酔科学会理事長)—といった意見も出ています。



また、後者の周産期医療提供体制については、厚生労働省から次のような周産期母子医療センターに関するデータが示されています。

【総合周産期母子医療センター】
▽24時間体制で院内に医師が確保されている施設は、診療科別で麻酔科82施設(74%)、脳神経外科・脳神経内科67施設(60%)、心臓外科46施設(41%)、循環器内科72施設(65%)にとどまっている


総合周産期母子医療センターの機能・体制1



▽約1割の施設は脳血管障害を合併する妊産婦への対応が不可能


総合周産期母子医療センターの機能・体制2



▽1割強は「妊娠中の外傷患者」に対応することが不可能で、妊産婦の危機的出血、DIC、敗血症などの重症症例に対応不可能な施設も一定存在する


総合周産期母子医療センターの機能・体制3



▽「24時間対応可能な精神疾患を診ることのできる医師」がいる施設は約半数にとどまっている


総合周産期母子医療センターの機能・体制4



【地域周産期母子医療センター】
▽24時間体制で院内に医師が確保されている施設は、診療科別で麻酔科96施設(33%)、脳神経外科・脳神経内科75施設(25%)、心臓外科33施設(11%)、循環器内科88施設(30%)に過ぎない


地域周産期母子医療センターの機能・体制1



▽約3割の施設は脳血管障害を合併する妊産婦への対応が不可能


地域周産期母子医療センターの機能・体制2



▽約2割は「妊娠中の外傷患者」に対応することが不可能で、約2割の施設で、妊産婦の危機的出血、DIC、敗血症などの重症症例に対応不可能である


地域周産期母子医療センターの機能・体制3



▽「24時間対応可能な精神疾患を診ることのできる医師」がいる施設は約2割に過ぎない


地域周産期母子医療センターの機能・体制4



こうした状況も踏まえて厚労省は、▼医療の質や安全性の確保、医師や助産師等のキャリア形成の観点からも「施設ごとの症例数」を確保するために【集約化】が重要である▼ただし、妊婦の移動にかかる負担の増加等や、分娩取扱施設における分娩数の増加等の課題等への対応の整理が必要である▼集約化とともに「周産期母子医療センターのあり方」「分娩を取り扱わない医療機関等が健診等を維持する」などの役割分担についての検討も必要となる—との考えを示しています。「新地域医療構想における急性期拠点機能病院の集約化」と同じ考え方と言えるでしょう(関連記事はこちら)。



構成員からは、▼妊婦のほとんどは「陣痛が始まってから」医療機関に向かうため、アクセスはやはり重要な要素となる。また医療機関と消防・救急隊が連携し、救急活動の質を医学的観点から保証・向上させるためのメディカルコントロール協議会には新生児科の医師が少なく、成人・小児向けの蘇生術を行っているケースも少なくない。周産期・新生児医学会で新生児向けの蘇生術を学ぶ研修プログラムを準備しており、それを受講する医師等への受講費補助も検討してほしい(細野茂春構成員:日本周産期・新生児医学会特任理事)▼3次救急を担える施設を総合周産期母子医療センターに位置付け、ハイリスクの妊産婦にしっかり対応できる体制を整えるべき(関沢明彦構成員:日本産婦人科医会常務理事)▼集約化には相応の時間がかかる点を見越して、地域での協議を進めるべき(家保英隆構成員:全国衛生部長会会長)—などの意見が出されています。



「従前の予想」をはるかに上回るペースで少子化が進んでおり、「医療機関経営の経営確保」「医療の質確保」を見越した「小児・周産期医療提供体制の集約化」論議を、地域の状況(交通事情や住民の居住状況、他の医療資源など)も勘案しながら進めていくことが重要です。

なお、別に出産費用の無償化論議も進んでおり、こうした議論とも歩調を合わせて「小児・周産期医療提供体制の確保」を考えることが重要です(関連記事はこちら)。

引用元:
想定超えた少子化が進む中で、小児医療機関、産科・産婦人科医療機関の「集約化、大規模化」をさらに進めよ―小児・周産期WG(GemMed)