米オレゴン健康科学大学に所属する研究者らがNature Communicationsで発表した論文「Induction of experimental cell division to generate cells with reduced chromosome ploidy」は、体細胞から機能的な卵子を作製する技術を発表した研究報告だ。
皮膚細胞から卵子が作られる
不妊症の主な原因の一つは、機能する配偶子(卵子や精子)の欠如だ。高齢により卵子や精子の質と量が低下し、体外受精でも対応できない場合がある。現在、このような患者が遺伝的につながりのある子供を持つには、ドナーの卵子に頼るしかない。
研究チームは、体細胞核移植(SCNT)技術を応用した新しいアプローチを開発した。通常の体細胞は46本の染色体を持つが、卵子と精子は各23本しか持たない。今回のアプローチでは、体細胞の染色体数を実験的に半減させるように試みた。
実験では、健康な女性から提供された270個の成熟卵子を使用した。まず卵子から元の核を取り除き、そこに皮膚細胞の核を移植。卵子の細胞質に存在する特殊な環境により、移植された体細胞の染色体は、DNA複製を経ずに直接分裂期に入った。
しかし、精子を注入しても通常の受精のようには進まなかった。対照群の正常な卵子では約83%が受精後に極体を放出し前核を形成したのに対し、SCNT卵子では23%程度にとどまった。この問題を解決するため、電気刺激とロスコビチンという薬剤を組み合わせた人工的活性化を行ったところ、約78%のSCNT卵子で染色体の分離に成功した。
電気刺激とロスコビチン処理により活性化されたSCNT卵子の受精後の発生過程
精子と受精させた実験では、一部の胚で体細胞由来と精子由来の染色体が統合された。しかし、染色体数の不均衡により多くが異数体となり、初期段階で発育が停止。胚盤胞(受精から約5〜6日後に形成される状態)まで発育したのは8.8%にすぎなかった。
発育した胚では、全ての精子染色体は存在していたが、体細胞由来の染色体はさまざまな組み合わせで存在していた。
この研究は概念実証の段階であり、研究チームも臨床応用にはさらなる研究が必要であることを強調している。初期段階にあるものの、卵子を持たない不妊患者が自身の遺伝子を持つ子供を授かる可能性を開く研究だ。
引用元:
自分の皮膚細胞から“卵子”を作る技術 Nature系列誌で米研究者らが発表 不妊治療への応用目指す(ITmedia NEWS )