乳がんを発症し、遺伝子の特徴によって乳がんや卵巣がんなどを発症しやすいことが分かった患者には、再発や新たながんの発症リスクを下げる処置として卵管・卵巣摘出や乳房切除が選択肢になる。ただ、その効果はどのぐらいなのか。福島県立医大などが参加した国際共同研究グループは、既に効果が報告されている卵管・卵巣摘出だけでなく、乳房切除もそれだけで再発や新たながんのリスクを減らし、結果として生存期間を延ばす効果があるとの研究結果を報告した。

▽リスク減らす処置

 研究に加わった同医大の岡野舞子講師(乳腺外科学)によると、「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」は、まだがんを発症していない人も含めてそうした遺伝子を持っている状態を指す言葉だ。多様な遺伝子変異の影響が報告されているが、特に、DNAの傷を修復してがん化を防ぐ役割を持つ「BRCA1」「BRCA2」の遺伝子に変異(病的バリアント)があると影響が大きい。両親どちらかがその因子を持つと、2分の1の確率で子に遺伝する。
 診療ガイドラインによると、この二つに該当すると一生で乳がんを発症する確率が40〜70%と極めて高い。卵巣がん、膵臓(すいぞう)がん、男性の乳がんや前立腺がんのリスクも高まるとされる。
 再発リスク低減の選択肢として示されるのが「卵管・卵巣の摘出」と「乳がんが見つかったのと違う側も含めた乳房の切除」だ。がんが再発しやすい部位をなくし、卵巣から分泌されて乳がんの増殖を促す女性ホルモンの産生を減らす。ただ、それらの処置が最終的に生存期間の延長につながることを示すデータは乏しかった。

▽5千人を解析

 今回の研究には世界109施設が参加。日本からは同医大と、この病気に早くから取り組む福島県郡山市の星総合病院から患者が登録された。
 各施設で2000〜20年に40歳以下で乳がんと診断された人のうち、BRCA1、2のいずれかに病的バリアントがあった計5290人が解析対象とされ、そのうちリスク低減のために卵管・卵巣摘出を施された患者が2782人、同じく乳房切除が2910人だった。
 診断からおおむね8年以上の経過を調べた結果から、生存期間を延ばせるかどうかを統計的な手法で推計すると、乳房切除だけでも生存期間が延長され、死亡リスクが35%低減することが明らかになった。また、乳がんが再発したり新たに発症したりするリスクも、卵管・卵巣の摘出を受けた場合は35%減、乳房切除では45%減となった。
 岡野さんは、リスク低減の乳房切除がそれだけで生存期間の延長に効果があると示されたのは初めてで、今後、治療の指針にも反映される可能性があると話した。
 ▽専門家と相談を
 がんの発症年齢や部位によってHBOCが疑われる場合は、生まれつきの体質を調べる遺伝学的検査で確かめられるが、結果は親族にも影響するため、受けるかどうかは重大な決断となる。
 岡野さんは患者に、遺伝子検査を受けることでその後の治療などに医学的なメリットがあると同時に、親族や社会との関係、本人の受け止め方などでデメリットがあり得ることも併せて説明。予防処置についても、乳房切除で体形やセルフイメージが大きく変わること、卵巣摘出は閉経と同じで体調が変わること、妊娠・出産との兼ね合いもあることなどを話す。
 いずれも難しい選択で、岡野さんは検査や処置を受けるか判断に迷ったときは医師や遺伝カウンセラーと納得がいくまで話し合うよう勧めている。

引用元:
乳房切除に生存延長の効果 遺伝性乳がん卵巣がん  国際研究で判明( 47NEWS)