大阪大学の研究グループは15日、精子の運動を制御する新たな仕組みを発見したと発表した。精子の運動に関わる分子の生産を制御するたんぱく質を突き止めた。研究成果は男性の不妊症の診断や治療の開発につながる可能性がある。米科学誌「米国科学アカデミー紀要」に論文が掲載される。

このたんぱく質の名前は「TMEM217」で、精子が作られる精巣に多い。だが精子の機能にどう関わるかは不明だった。大阪大微生物病研究所の飯田理恵特任助教らは、TMEM217が別の「SLC9C1」というたんぱく質と結合することを発見した。

従来の研究では、SLC9C1の働きで精子の運動に必要な「サイクリックAMP(cAMP)」という分子ができることがわかっている。そこで飯田特任助教らは遺伝子操作でTMEM217を欠損させた雄のマウスを作った。すると精子のなかのSLC9C1も無くなり、cAMPの量も減った。

このマウスを正常な雌のマウスと交配させた。正常な雌雄が交配すると平均で約9匹の子が産まれるが、この場合は1匹も産まれなかった。遺伝子を欠損させたマウスの精子を観察するとほとんど運動していなかったことから、TMEM217は精子の運動に不可欠だと突き止めた。

さらに遺伝子を欠損させたマウスの精子に、cAMPと同じ機能をもつ別の分子を加えた。すると運動能力が回復し、受精率が著しく高まった。この精子を使って卵子と体外で受精させると、正常な子が産まれた。

不妊は先進国のカップルで6組に1組が直面する課題で、その半数近くが男性側に原因があるとされる。精子の運動性低下が原因の一つだ。

今回の研究成果は男性不妊症の診断法や、精子の動きが鈍くなる精子無力症の治療法開発に役立つ可能性がある。

引用元:
大阪大学、精子の運動制御する仕組み発見 男性不妊の治療へ道(日本経済新聞)