「プレコンセプションケア(プレコン)」というなじみのない概念が、企業の福利厚生策やエンゲージメント施策のキーワードとして注目を集め始めている。政府もこの概念の普及に力を入れており、企業の取り組みを促進させようと動く。いずれ働き方の改善施策として当然のように組み込まれる可能性がある。
ではプレコンとは何だろうか。世界保健機関(WHO)の定義によれば、「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」を指す。既に英国やオーストラリアなどでは公的保健政策の一環として取り組みが進んでいるという。
日本で認知が進んでいるとは言えないが、2018年には政府の方針に組み込まれ、さらに25年5月にはこども家庭庁が「プレコンセプションケア推進5カ年計画」を策定した。性別を問わず、将来の妊娠・出産を見据えて性や健康に関する正しい知識を身に付けてもらい、生活習慣や受診行動を見直すことで、妊孕性(にんようせい)や健康全般を整えることを目的としている。ちなみに妊孕性とは「妊娠する(させる)力」を指す。
人的資本経営や健康経営のカギに
妊娠や出産、あるいは妊孕性は極めてプライベートな領域のテーマとも言える。それと企業とに、どんな関係があるというのだろうか。
こども家庭庁の5カ年計画では、企業に求める役割として、社員へのプレコンに関する情報提供や講演会の実施、特別休暇や福利厚生制度への反映などを挙げている。また、経済産業省が実施する「健康経営度調査」の回答企業において、プレコンに関する取り組みの実施率を今後80%まで高める目標を掲げた。24年度には、同調査に3869社が回答している。
深刻化する少子高齢化や低出生体重児の割合増加といった課題に対応すべく、政府は企業にもプレコン推進に協力を求める。では企業はこうした課題にどこまで責任を持って関与すべきなのか。企業ごとに反応や対応は分かれるところだろう。
ただし、働き方の改善や社員のエンゲージメント向上の観点から考えると、プレコンを無視するのは悪手となりかねない。プレコンに力を入れる企業は「人材採用の際のアピールにつながる」「社員の健康と福祉を向上させる」。こども家庭庁の5カ年計画はこう主張している。
プレコンに対する認知が進めば、これを推進する企業とそうでない企業とのコントラストがはっきりと見えてくるだろう。後ろ向きな企業は人材の採用や定着率で劣後する恐れはある。人手不足が深刻化する中で、競争力の観点からリスクになりかねない。
引用元:
JTBやユニ・チャームが妊娠前ケア「プレコン」を充実 卵子・精子凍結支援も ( 日経ビジネス電子版)