ヒトのiPS細胞などから精子と卵子を作って受精させる研究は倫理的な問題があるとして、これまで認められていませんでしたが、国の専門調査会は24日、不妊治療や遺伝に関わる研究などに限って容認するという報告書をまとめました。

iPS細胞などから精子と卵子を作って受精させる研究はマウスでは行われていますが、ヒトでは倫理的な問題があるとして認められていませんでした。

内閣府の生命倫理専門調査会は、ヒトで必要な技術が今後確立する可能性があるとして3年前から議論を進めていて、24日報告書をまとめました。

それによりますと、人工的に作った受精卵は体に戻せば子どもが生まれる可能性があり、通常の受精卵と同じように尊重するべきだとしています。

そのうえで、精子や卵子、それに受精卵を詳しく分析することで不妊治療の効率を高めたり、病気が遺伝する仕組みを解明したりする研究などにつながるとして、こういったテーマに限り研究を容認するとしました。

実施にあたっては倫理面に配慮し受精させたあと培養する期間を14日間に制限するなどの制約を設け、研究計画を事前に審査する体制が必要だとしています。

生殖細胞の研究に詳しい慶応大学の入江奈緒子教授は「日本が世界をけん引している分野なので、倫理面と科学の発展のバランスを取りながら進めることが重要だ」と話していました。

遺伝や不妊治療の研究進むか
ヒトのiPS細胞などから精子と卵子を作り受精させる技術をめぐっては、去年、京都大学のグループがヒトのiPS細胞から精子と卵子、それぞれのもとになる細胞を大量に作ることに成功したと報告するなど、国内外で研究が進んでいて近い将来可能になるとみられています。

慶応大学の入江奈緒子教授は今後、iPS細胞から作った精子と卵子を受精させる技術が確立すれば、遺伝に関わる研究が大幅に進む可能性があると指摘しています。

iPS細胞から作った精子と卵子を受精させ、そこから再びiPS細胞を作り出す実験を繰り返すことで、遺伝情報が親から子へどのように引き継がれるか観察できるようになります。

さらに、そうした実験を病気の患者の細胞で行えば、病気が遺伝する仕組みの解明にもつながるとしています。

また、受精から初期の発生の過程を再現できるようになることで、不妊治療の効率や安全性を高める研究にも役立てられるということです。

入江教授は「生殖細胞や初期発生の研究は人の命の始まりを扱う繊細で重要なもので、倫理的な問題点を整理できたことは非常に意義深い。この分野は技術の進歩が速いので、それに追いつけるようルールを作っていくことが大切だ。倫理面と科学の発展のバランスを取りながら進んでほしい」と話していました。

今回の報告書を受け、来年にかけて国の指針が改定される見込みで、その後、実際に研究が始まることになります。

引用元:
ヒトiPS細胞からの精子卵子で受精させる研究 テーマ限り容認へ(NHK)