2025年5月21日、抗悪性腫瘍薬チソツマブベドチン(遺伝子組替え)(商品名テブダック点滴静注用40mg)が薬価収載と同時に発売された。同薬は2025年3月27日に製造販売が承認されていた。適応は「癌化学療法後に増悪した進行または再発の子宮頸癌」、用法用量は「成人に1回2mg/kgを30分以上かけて、3週間間隔で点滴静注する。ただし、1回量200mgを超えないこと。なお、患者の状態により適宜減量する」となっている。

 子宮頸癌の95%以上は、性的接触による子宮頸部のヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が原因だ。子宮頸癌の発症予防には複数のHPVワクチンが用いられているものの、いまだに毎年約57万人の女性が罹患し、世界の女性のがん死亡原因の4位となっている。また、癌診断時の年齢は35〜44歳が最も多いと言われている。

 子宮頸癌の治療は、癌の進行期や患者の年齢などにより手術療法、放射線療法、化学療法を単独、もしくはこれらの治療を組み合わせる。進行あるいは再発した子宮頸癌における一次治療の標準治療は、シスプラチン(CDDP、ランダ他)などの白金製剤を含む抗悪性腫瘍薬と、血管新生阻害薬ベバシズマブ(遺伝子組替え)(アバスチン)や免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(遺伝子組替え)(キイトルーダ)などの分子標的薬の併用が推奨されている。

 さらに2023年3月から、一次治療に化学療法歴がある患者に対して、抗PD-1抗体セミプリマブ(遺伝子組替え)(リブタヨ)の単独療法も選択肢に加わった。しかし、一次治療にペムブロリズマブを含む化学療法歴のある患者においては、セミプリマブの有効性は検討されておらず、二次治療以降の治療選択肢は依然として限られている。

 チソツマブベドチンは、既存の薬剤とは異なる新規の作用機序を有する、子宮頸癌では初の抗体薬物複合体(ADC)製剤だ。抗ヒト組織因子(TF)モノクローナル抗体(IgG1κ)であるチソツマブと微小管重合阻害作用を有するモノメチルアウリスタチンE(MMAE)が、プロテアーゼで切断可能なバリン-シトルリンリンカーを介して結合している。同薬は細胞表面タンパク質のTFを発現している腫瘍細胞に結合し、ADC-TF複合体として細胞内に取り込まれることで、蛋白質分解を介してMMAEを放出する。遊離型MMAEが微小管に結合し微小管重合を阻害することによって、細胞周期の停止およびアポトーシスが誘導され、腫瘍細胞の増殖を抑制する。

 一次または二次全身療法の治療歴のある、再発または遠隔転移を有する子宮頸癌患者(日本人を含む)を対象とした国際共同第III相無作為化試験(SGNTV-003[innovaTV 301]試験)において、同薬の有効性および安全性が確認された。海外では、2024年4月現在、米国で承認されている。

 重大な副作用として、結膜炎(30.8%)や角膜炎(18.8%)などの眼障害、末梢性感覚ニューロパチー(26.8%)などの末梢神経障害、好中球減少症(7.2%)のほか、皮膚粘膜眼症候群などの重度の皮膚障害、消化管出血などの出血、腸炎、腸閉塞、間質性肺疾患の可能性があるので十分注意する必要がある。また、その他の副作用として主なものに、悪心、鼻出血、脱毛症(各20%以上)がある。

 薬剤使用に際して、下記の事項についても留意しておかなければならない。

●投与により視力低下を伴う眼障害が現れ、失明に至る可能性があることから、眼科医との連携の下で使用し、投与開始前に眼科医による診察を実施すること。また、投与中の眼の異常の有無の確認および眼障害軽減については、添付文書の「警告」「用法及び用量に関連する注意」「重要な基本的注意」「特定の背景を有する患者に関する注意」「副作用」の項を参照すること

●薬剤調製時および投与時の注意に関しては、添付文書の「適用上の注意」を参照すること

●投与により副作用が生じた場合は、添付文書の「用法及び用量に関連する注意」に記載の基準を考慮して、薬剤を休薬・減量・中止すること

●医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「血小板減少症・白血球減少症・貧血」「infusion reaction」「アナフィラキシー」「間質性肺疾患」「肝機能障害」が挙げられている

引用元:
子宮頸癌に初の抗体薬物複合体、二次治療に新たな選択肢(日経メディカル)