最近は、「男性不妊」「男性更年期」などのワードを耳にする機会が増えた。加齢に伴う体の変化や不調は女性特有の問題のように扱われてきたが、男性も同じだ。泌尿器科医として長年男性不妊の研究に取り組み、中高年の男性の体の不調、男性更年期の問題などに詳しい医師が様々な疑問に答えていく。

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 今回は、男性不妊について考えましょう。男性不妊には、精子の数や運動率の低下、ホルモン異常、性機能障害など、さまざまな要因がありますが、約40%を占めるのが「精索静脈瘤」です。しかし一般にはほとんど知られていません。精巣の周りの静脈がうっ血し、血管がコブのように膨らむことで血流が悪くなり、精子の質に影響を与える病気で、痛みがあるケースもありますが、多くは無症状で、検査しなければ見つからないのです。

 「不妊」とは、結婚して1年が経っても子どもができない状態です。多くの男性は「自分に原因があるかもしれない」と考えることが少ないので、女性側が婦人科に通う夫婦が大半です。男性も婦人科での検査で精子の状態を調べる程度なので、男性が泌尿器科における不妊の検査をしなければ分からない「精索静脈瘤」を見逃してしまうのです。
この病気による血流障害が続くと、精子の質が下がり、DNAが傷つくこともあります。手術によって血流を改善すれば、精巣の状態が整い、精子の運動率や数の向上が見込まれ、実際、顕微授精(顕微鏡で確認しながら選んだ1つの精子を卵子の中に直接注入する方法)レベルだった精子の状態が、手術によって自然妊娠可能な水準まで回復した例も多いです。

■泌尿器科に行って発覚する病気もある

 ここで、手術を受けた患者さんの例を紹介します。例えば、Sさん(41歳・会社員)は、奥さんと6年間にわたって妊活を続け、顕微授精や人工授精、さらには鍼や漢方まで試しました。治療の負担は女性側に集中していました。

 そんな中、漢方薬局の薬剤師から「精索静脈瘤の可能性」を指摘されたそうです。Sさんが調べて私の外来に訪れ、検査の結果、精索静脈瘤が判明しました。日帰り手術を実施後、自然妊娠で女児が誕生しています。
 

 またTさん(35歳・会社員)夫婦は、2人目が妊娠できずに悩んでいました。1年にわたって顕微授精を続けても結果が出ず、通院していた産婦人科で「ご主人が精索静脈瘤かもしれない」との指摘を受けて来院しています(ちなみに産婦人科が男性不妊を疑い泌尿器科の診療を勧めるケースは稀。その理由は改めて取り上げます)。
夫婦は共働きでフルタイムで仕事していました。長期間の不妊治療が続いて精神的にも妊娠に対するモチベーションが下がっていた時期であったため、精索静脈瘤の診断後、すぐに手術し、術後2カ月で自然妊娠し男児が誕生しています。

 診療の現場では、婦人科で「精子の数が少ないため顕微授精しかない」と説明された後、泌尿器科で触診とエコー検査により精索静脈瘤が見つかり、手術によって自然妊娠が可能になった例は少なくありません。具体的に言うと、元気な精子数を示す総運動精子数が手術前と比べて手術後3カ月で1244倍に増加し、自然妊娠が可能なレベルに達したケースもあるのです。この患者さんの場合は術後6カ月で、奥さんが自然妊娠しています。

 不妊に向き合う際、最初の一歩として「男性も検査を受ける」という選択肢があることを知っておきましょう。不妊原因のひとつである精索静脈瘤の治療は決して特別な例ではありません。


引用元:
6年間の不妊治療の後、泌尿器科で発覚した意外な原因…男性不妊の4割「精索静脈瘤」とは(日経ゲンダイ)