はしかの感染者の報告が各地で相次ぎ、ことし、これまでに報告された感染者の数はすでに去年1年間を上回りました。多くは、海外での感染を通じたものとみられています。
海外に行く人も増える大型連休を前に、感染を防ぐために知っておくべきポイントをまとめました。
目次
感染力が極めて強い「はしか」とは
注目
海外に出かける人への注意点は?
感染者数は累計78人 去年1年間を上回る
はしかは「麻疹(ましん)」とも呼ばれるウイルスによる感染症です。感染力が極めて強く、飛まつや接触による感染だけでなく、空気感染も起きることが知られています。
国立健康危機管理研究機構によりますと、ことしに入ってから4月13日までに報告された感染者数の累計は78人で、すでに去年1年間の累計を33人上回っています。
このうち半数の39人は、直近の渡航歴などから海外で感染したと推定されていて
▽ベトナムから入国した人が30人
▽タイからの人が3人
▽フィリピンからの人が2人などとなっています。
日本は、はしかのウイルスが定着していない「排除状態」にあるとされていて、感染経路が不明なケースもあるものの、残りの感染者は海外で感染した人と国内で接触するなどして感染したと推定されています。
海外で広く流行 新型コロナ対策も影響か
WHO=世界保健機関によりますと、はしかが流行しているのは
▽タイやインドネシア、ベトナムといった「東南アジア」のほか
▽イエメンなどの「中東」
▽インド
▽ヨーロッパのルーマニア
▽アフリカのエチオピアなどの幅広い地域です。
また厚生労働省によりますと、アメリカではことしの3月20日までに17の州で378人の感染が報告され、2人が死亡しているということです。
流行の原因について、専門家は「一部の国で、新型コロナ対策に注力した結果、はしかのワクチン接種が滞ってしまったことや、以前よりもワクチンそのものに忌避感を持つ人が増え、接種が進まなかったことが影響を及ぼしているのでは」と分析しています。
感染力が極めて強い「はしか」とは
【感染経路】
患者がせきやくしゃみをするときに出る飛沫にウイルスが含まれていて、それを吸い込み感染します。
飛まつや接触だけでなく空気感染で広がることもあり、免疫がない場合、感染者と同じ室内にいただけでほぼ確実に感染するとされています。
まわりの人に免疫がなく、感染対策がとられない場合に患者1人が何人に感染を広げるかを示す「基本再生産数」は「12から18」とされ、「2から3」ほどとされているインフルエンザなどより感染力は格段に強いとされています。
【症状は発熱 発疹など 重症化も】
はしかに感染したときの主な症状は、発熱やせき、発疹、目の充血などです。
国立健康危機管理研究機構によりますと、熱は一度下がったあとに再び上がり、40度近い高熱が3日から4日ほど続くということです。発疹は発熱が始まってから数日たってから出るということです。
さらに、感染による合併症として肺炎や脳炎が引き起こされ、重症化するケースもあります。特に脳炎については、およそ1000人に1人の割合で起き、中には亡くなるケースもあります。
アメリカCDC=疾病対策センターによりますと、はしかに感染した子ども1000人のうち1人から3人は、呼吸器や神経系の合併症で亡くなるとしています。
【治ってからも病気を発症するケースが】
はしかが治ってからも数年後に10万人に1人ほどの割合で「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という病気を発症することがあります。
SSPEは、感染したはしかのウイルスが中枢神経系に潜み、長い潜伏期間を経て発症します。元気に暮らしていたにもかかわらず、急に日常の行動が出来なくなったり、異常な行動が目立つようになったりすることがあり、亡くなることもあります。
国立健康危機管理研究機構によりますと、2歳未満で感染し、4年から8年の潜伏期間を経た後、6歳から10歳ごろに発症することが多いとされていますが、成人でも発症するケースもあるとしています。
注目
海外に出かける人への注意点は?
厚生労働省は、はしかが流行する国で感染し、日本に帰国後に感染を広げてしまう事例が増えているとして、大型連休中に海外に出かける人たちに注意を呼びかけています。
具体的には、出発前に渡航先の流行状況を厚生労働省やWHOのホームページなどで確認するほか、母子健康手帳などでワクチンの接種歴やはしかの感染歴を確認することなどを求めています。
また、はしかが流行する国から帰国した後は、2週間程度は健康状態に十分注意することや、万が一、発熱やせき、鼻水や眼の充血、全身の発しんなどの症状が見られた場合は、医療機関を受診するよう求めています。
はしかは感染力が極めて強いため、厚生労働省は医療機関などに行く際は可能な限り公共交通機関を使わずに移動してほしいと呼びかけています。
専門家 “流行地域への渡航前に医療機関に相談を”
感染症に詳しい、国立健康危機管理研究機構の砂川富正 応用疫学研究センター長は「はしかには特効薬がないため、ワクチン接種で予防することが重要だ。特に定期接種の対象となる子どもが確実に接種することが大事だ」とした上で「海外の流行地域に行く予定のある人は自分の感染歴や、ワクチンの接種歴を調べ、必要に応じて渡航者向けの医療機関などに相談してほしい」と呼びかけています。
ワクチン供給不足で 接種が間に合わない子どもも
はしかを予防する最も有効な対策とされているのが、ワクチンの接種です。ところが去年から、一部のメーカーの製造不調によってワクチンの供給が不足し、子どもを中心に希望しても接種できないケースが相次ぎました。
横浜市港南区のクリニックでは、去年の8月ごろからはしかと風しんの混合ワクチンを希望通りに入荷できず、接種の予約を制限しなければならない状況が続きました。
このため、定期接種の対象となる小学校入学前の5歳と6歳の子どもでことし1月末までに接種を終えたのは、前年と比べて2割ほど少なかったといいます。現在は、十分な量のワクチンを入荷できるようになり、4月に取材をした日にも5歳の女の子が接種を受けていました。
女の子の母親は「ワクチンが不足していると聞いて心配していましたが、無事打つことができて安心しました」と話していました。
上大岡こどもクリニックの佐藤和人院長は「ワクチンは、はしかの流行を防ぐ上で重要だが、まだ接種が間に合っていない子どももいる。海外からウイルスが入ってくる可能性もあるので、1人でも多くの人にワクチンを接種してもらいたい」と話しています。
ワクチン定期接種 2年間延長に
はしかや風しんを防ぐ混合ワクチンの定期接種は、1歳の子どもと小学校入学前の5歳や6歳の子どもが対象です。
厚生労働省はワクチンの供給不足を受けて、接種できなかった子どもについて、4月から2年間、定期接種の期間を延長する特例措置を行いました。
厚生労働省や自治体は、ワクチンの接種を逃すと今後、はしかが流行した時に感染のリスクが高まるとして、保護者などに対し、定期接種の期間延長などを周知してワクチンの接種を呼びかけています。自分の子どもがワクチンを接種しているかどうかは、母子健康手帳などで確認できます。
引用元:
相次ぐはしか感染 海外旅行の注意点は 予防するには(NHK)