島原半島に三つある産婦人科の病院、診療所の中で最大の「島原マタニティ病院」(長崎県島原市、30床)が7月末で閉院する。地域における今後の産科医療はどうなるのか。同病院の立ち上げ人の1人で、現在は長崎市内でクリニックを開く県医師会の森崎正幸会長(76)に聞いた。
【写真】7月末までに閉院する島原マタニティ病院の外観
−同病院との関係は。
「島原マタニティ病院は1983年に私を含む医師3人で始めた診療所が出発点。14年間勤務した」
−閉院をどう見るか。
「島原は里帰り出産の多い土地柄で、分娩(ぶんべん)施設はわれわれの開業前に島原市内で四つあった。当時のマタニティ病院の分娩数は年間700〜800件。それが350〜400件まで落ち込んでおり、やめる理由になったのだろう」
−島原半島の分娩を担う体制は今後どうなるか。
「半島に残る二つの産婦人科で扱えるのは年間計200件ほど。残る150〜200件は半島外の諫早市、長崎市東部の施設でカバーすることになる」
「諫早市の産婦人科は隣の大村市のお産もカバーしなければならず、雲仙市の妊婦は通院の範囲を広く捉えた方がいい。同市内の愛野、千々石の人は諫早市まで車で30分、長崎市東部までは40分。小浜から同市東部までは50分くらい。全国的にも、40分ほどの通院時間は普通になっている」
−県内における地域ごとの分娩施設の現状は。
「施設がない市は、平戸と松浦、西海、雲仙の四つ。県北の人はどうするかというと、平戸市から50分〜1時間かけて佐世保市まで行くなどしている」
−陣痛後、出産に間に合わないことはないのか。
「それはない。1時間では産まれない。初産で平均12〜14時間、2回目以降で6時間ほどかかる。全国で分娩施設が減る中、国は妊婦健診の交通費の8割を補助する計画だが、対象は1時間以上かかる場合のみ。そういう時代だ」
−病院経営はどこも楽ではないと聞く。
「病院の8割は赤字とされる。医療機関の収入に当たる診療報酬の、2024年度の引き上げは0・88%と微々たるものだった。増収がない上に物価高で光熱費、人件費が高騰している。中でも産婦人科と小児科は少子化の影響をもろに受けており、経営は厳しい」
−特に厳しい理由は。
「陣痛はいつ来るか分からない。母児の命が懸かっており、24時間の対応が求められる。患者が来る来ないにかかわらず、医師、看護師、助産師らを置いておかねばならないからだ」
−地域で安心して出産するのに求められる施策は。
「将来的には公的な病院がお産を担い、赤字でもやっていくことになるだろう。周りの診療所は妊婦健診だけをやる。『産科オープンシステム』と呼ばれるこの拠点病院と診療所の連携は長崎市や大村市で既に行われている。島原半島でも、県病院企業団が運営する島原病院(島原市)にいずれ産科をつくらないといけない時が来るだろう」
(本山友彦)
島原半島の産科の現状
島原マタニティ病院は3月末で出産の対応をやめており、閉院する7月末までは婦人科の診療や乳児健診などの外来診療のみを受け付ける。島原半島にはこの他、山崎産婦人科医院(19床、島原市)、いその産婦人科(12床、南島原市)の2院がある。県内の出生数は2021年8862人(前年比3・5%減)、22年8364人(同5・7%減)、23年7656人(同8・5%減)と減少傾向にある。
引用元:
島原半島最大の産科が7月閉院 なぜ産婦人科の経営は厳しい?診療報酬、物価高…専門家に聞く(Yahoo!ニュース)