乳がん細胞の増殖とアミノ酸の関係
 今後の記事で筆者の研究を詳細にご紹介しようと思っているが、ここでは簡単に、筆者が研究している乳がんと栄養の話を紹介しよう。

 食と健康の関係は、糖尿病のような代謝疾患のみならず、がんなどの病気においても分子レベルで理解が進んでいる。近年、食べ物に含まれる栄養分子が、体内の細胞でさまざまな役割を果たしていると明らかになったのもそのためだ。

 細胞の増殖や転移に、アミノ酸が大きな役割を果たしている病気の一つとして乳がんがある。

 アミノ酸は、私たちの体を作るタンパク質の材料になる分子で、全部で20種類ある。アミノ酸の一つひとつはレゴブロックのようなもので、イメージとしては、それらを組み合わせることでタンパク質ができあがる。


 一方でアミノ酸は、細胞の中では「遊離アミノ酸」としてバラバラの状態でも存在している。この遊離アミノ酸の量が増えたり減ったりすることで、細胞の増殖スイッチなどがコントロールされていることも、最近の研究で分かってきた。

 問題になるのは、こうしたアミノ酸が乳がん細胞の増殖に関連するということだ。

 実のところ、ロイシンやシスチンというアミノ酸ががん細胞の増殖に関わっている。また、がん細胞がほかの場所に広がる(転移する)ときに、重要な役割を果たしているのはアスパラギンというアミノ酸で、これがないと乳がん細胞の転移が大幅に減るという報告もある。

 さらに驚くべきことに、特定の大腸がん細胞では、栄養ドリンクでおなじみのビタミンCを大量に摂取すると、大腸がん細胞が死滅するという研究結果も報告されている。

 こうした「栄養に注目したがん治療」が次々と報告される中、アメリカでは「Faeth Therapeutics(フェイス・セラピューティクス)」といった会社も設立されている。がん治療においても栄養は切っても切り離せない重要な要因だ。

 鶴岡市では、慶應先端研や山形大学農学部と連携し、最先端の研究技術を駆使して「食と科学」の融合を進めようとしている。豊かな自然が育んだ食資源と、世界トップレベルの科学技術。その出会いは、これまでにないイノベーションを生み出すはずだ。

引用元:
乳がん細胞の増殖や転移に大きな役割を果たしているアミノ酸、がん研究で注目を集める栄養分子とがん細胞の関係(JBpress)