2人に1人は生涯で一度はがんになる時代。加齢や生活習慣が大きな要因だが、遺伝要因の強い「遺伝性がん」もある。乳がんと卵巣がんなどの一部では遺伝性が知られ、遺伝子変異の有無を調べる検査も広がっている。親やきょうだいなど血縁者ががんになった場合、自分が遺伝要因を持っているか不安になる人もいる。どう対処すればよいだろうか。
▽子へは50%の確率
専門家で構成する「日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構」の診療ガイドラインによると、DNAが傷ついた時に修復する遺伝子「BRCA1」または「BRCA2」に病気と関係する変異があると「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」と呼ばれる。発症していない場合も含まれ、遺伝子変異があっても生涯がんを発症しないこともある。BRCA1に変異があると、80歳までに乳がんを発症するリスクは72%、卵巣がんは44%、BRCA2では乳がんは69%、卵巣がんは17%と海外で報告されている。
一般女性が生涯に乳がんになる割合は11%なので、遺伝子変異があるかどうか気になるところだ。BRCAの変異は性別にかかわらず親から子へ50%の確率で伝わる。
ただ、これらの変異を持つ人は200〜500人に1人と考えられ、乳がん患者の4%、卵巣がん患者の10〜15%程度。ガイドラインに基づくと、BRCAの遺伝子変異が確認されている血縁者がいる場合や、若年または複数箇所でがんを発症した場合などは、遺伝学的検査が望ましいとされる。
▽保険適用に条件
BRCAの検査は2020年4月に保険適用が拡大された。対象には、@45歳以下で乳がんと診断されたA乳がんと診断され、血縁者に乳がんまたは卵巣がん、膵臓(すいぞう)がん発症者がいるB卵巣がん、卵管がん、腹膜がんと診断された―などの条件がある。がんを発症していない人や条件に当てはまらない場合は自費診療で、10万〜30万円程度かかる。
BRCAの遺伝子変異が判明すると、75歳までは半年から1年に1回乳房のエックス線検査を受け、さらに年1回、MRI検査を受ける。リスク低減のために乳房や卵巣を発症前に切除するかどうかも検討課題となる。
遺伝学的検査は、HBOCかどうかを調べる検査のほか、数十のがん関連遺伝子を幅広に調べる多遺伝子パネル検査や、発症したがんに効く薬を調べる目的の検査もある。想定外のがんのリスクを高める遺伝子変異が判明し、子どもに受け継がれているか、血縁者に結果を伝えるべきか悩むケースも少なくない。
がん研究会有明病院の植木有紗・臨床遺伝医療部長(右)と幅野愛理・認定遺伝カウンセラー=東京都江東区
▽当事者の声
がん研究会有明病院(東京都江東区)の植木有紗・臨床遺伝医療部長は「検査は選択肢の一つだが、正しい診断に基づいてがんを早く見つけて治療につなげられる。ご本人や家族にとっても、陽性になった場合にどのような対策が取れるか、事前に専門家に相談して想定しておく意味は大きい」と話す。そのためにも遺伝カウンセリングを受けられる医療機関での検査が勧められる。
有明病院では年間700〜800人がBRCAの検査を受け、うち約10%が陽性判定という。
認定遺伝カウンセラーの資格を持つ有明病院の幅野愛理さんによると、遺伝カウンセリングでは「検査は受けた方がいいのか」「陽性だったら子どもはどう感じるか」「他の人はどうしているのか」といった質問が多い。幅野さんは患者や家族の声をまとめた冊子「遺伝性がん 当事者からのメッセージ」を発行し「不安や悩みの解決への糸口にしてほしい」と話している。冊子は同病院のホームページから閲覧できる。(共同=戸部大)
引用元:
検査広がる遺伝性がん 乳房や卵巣で高リスク 知ることの意義とは(47NEWS)