東京科学大学の黒田公美教授らは赤ちゃんを効果的に寝かしつける手法を体験できる保護者向けのアプリを公開した。「抱っこしながら歩く」「抱っこして座る」などの動作を音声で案内する。

特定のウエアラブル端末と連携すれば赤ちゃんの心拍数の変化なども記録できる。こうしたデータの提供者を募り、赤ちゃんごとに寝かしつけの最適なタイミングを予測する人工知能(AI)の開発を目指す。

赤ちゃんは眠たくても眠れずに泣き叫ぶことが多い。泣きやまないと保護者のストレスが高まり、産後うつや児童虐待につながることがある。こども家庭庁の調査によると、保護者などが心中以外で子どもを死亡させた動機のうち「泣きやまないことにいらだったため」は7.5%を占める。

研究チームはこれまでに、泣いている赤ちゃんを抱っこして10分ほど歩き続けると8割以上が泣きやむことを発見した。抱っこ歩きの後、座って抱っこを8分続けると半数以上が寝ることも分かった。

子どもが親に抱えられて運ばれるとおとなしくなる現象は「輸送反応」と呼ばれ、マウスでもみられる。野生動物の場合、親は身の危険が迫った時に子どもを運ぶことが多い。この時、子どもがおとなしくなると生存に有利になると考えられている。

この寝かしつけ手法を手軽に体験できるアプリ「SciBaby(サイベビー)」をアンドロイド端末向けに公開した。抱っこ歩きや抱っこ座りのタイミングを音声で案内して保護者を支援する。抱っこ歩きのリズムに適した音楽も流せる。生後3週から12カ月までの赤ちゃんへの使用を推奨する。

アプリを通して研究用のデータも収集する。特定のウエアラブル端末を赤ちゃんの脚につけてアプリと連携すれば、赤ちゃんの心拍数の変化や体の動きを記録できる。利用者のうち研究参加に同意した人からデータを集めて分析する。

これまでの研究では寝た赤ちゃんをベッドに置くと約2割が起きてしまった。赤ちゃんの心拍や脈拍の状態をもとに、ベッドに置く最適なタイミングを予測できる可能性があるとみている。アプリを通して寝かしつけ数千回分のデータ収集を目指す。

黒田教授は「赤ちゃんを泣きやませる方法論はいろいろあるが、効果がはっきりしないものもある。研究により、子育て経験の少ない親を助けられれば」と話す。現状でアプリと連携できるのはフィンランドのポラール社のウエアラブル端末のみだが、今後他の端末も使えないか検討する。


引用元:
赤ちゃん寝かしつけ、アプリで効果的に 東京科学大学(日本経済新聞)