今月8日は、女性の権利向上のために国連が定めた「国際女性デー」だ。近年、女性の権利のひとつとして注目を集めるのが、「性と生殖に関する健康と権利(SRHR=Sexual and Reproductive Health and Rights)」。国際的に基本的人権のひとつとされている権利の歴史と概念をひもといた。
国際女性デー
SRHRは、自分の体や性、生殖について誰もが十分な情報を得ることができ、望み通りに選択や決定ができることと、そのために必要な医療やケアを受けられる権利と定義されている。「いつ誰と結婚するのか/しないのか」「子どもはいつ産むのか/産まないのか」などを自分で決められることも、SRHRが保障する権利だ。
この権利の概念が登場したのは1994年、エジプト・カイロで開かれた国連国際人口開発会議だ。開発途上国で人口が急増し、21世紀に向けて人口爆発をどのように抑止するかが議題となった。途上国を中心に出産のタイミングや回数、避妊するかどうかを自分で決められない女性がいる現状を受けて、中絶を含めた生殖に関する決定権を個人の権利と位置づけた。
翌95年、ジェンダー平等などをテーマに北京で開催された世界女性会議では、「性について自由に決定する権利は女性の人権に含まれる」などと盛り込んだ「北京行動綱領」を採択。二つの国際会議を経てSRHRという言葉が広まった。国連が2015年に採択した持続可能な開発目標(SDGs)でもSRHRの保障を明示している。
国内でも施策広がる
国内でも、SRHRに沿った施策が広がっている。
コロナ禍の21年には、女性が経済的な理由などで生理用品を購入できない「生理の貧困」が社会問題となり、生理用品を無料で配布する自治体や企業もあった。22年には、不妊治療が公的医療保険の対象となり、治療費の負担が軽減された。23年には、望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬を、医師の処方箋なしで薬局で試験的に販売する調査研究も始まった。
女性活躍推進の流れで、働き方に影響を及ぼす月経や月経前症候群(PMS)、更年期の症状など健康課題に注目が集まり、その軽減につながる情報も積極的に発信されるようになっている。産婦人科医の 宋美玄そんみひょん さんは「これまで女性は体調不良を我慢してきたが、対処法があり、自分に合う対処法を選択できるという理解が広まったことは大きな一歩だ」と評価する。
包括的性教育
残された課題のひとつが性教育だ。日本では生殖や男女の体の構造などの教育内容に注目が集まる。だが、欧米などで行われているのは、性の多様性や他者の尊重など、より幅広い「包括的性教育」だ。国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)が09年に示した包括的性教育の手引では、5歳から18歳まで、年齢に応じて学ぶことを推奨している。
SNSやインターネットでは、性に関する誤った情報が氾濫している。若い世代に性の正しい認識を伝える活動を行うNPO法人「ピルコン」理事長の染矢明日香さんは「包括的性教育は人権教育だ。自分を肯定的に捉え、他者を尊重することを学ぶのは、多様な人と生きる社会の基礎になる」と訴える。
SRHRの概念をより広く捉えようとする取り組みも広がっている。主に開発途上国の女性や子どもを支援している公益財団法人「ジョイセフ」など4団体は24年、「誰もが自分と他者の心と身体を尊重し、自分らしく生きられる社会」を目指し、「ジャパンSRHRプロモーションネットワーク」を設立した。今後、SRHRの概念に基づいた政策提言などを行うことにしている。
引用元:
性と生殖の権利、「生理の貧困」「望まない妊娠」対策進む…性教育に課題(読売新聞オンライン)