女性の更年期に起こる症状は多様で個人差も大きい。ただ「閉経が近づけば何かしら不調が出るのは当たり前」と、すべての体のサインを更年期症状と決めつけて放置するのは危険だ。更年期症状に隠れがちな疾患について知識を持ち、主体的に検査を受けるなど健康を守るアクションにつなげたい。

前兆を見逃して緊急入院
翻訳者の村井理子さん(54)は7年前、犬の散歩途中に突然、体調の悪化に見舞われた。腹部の張りを強く感じ、呼吸が浅く、歩くことすらままならない。なんとか帰宅して病院に駆け込むと緊急入院を言い渡された。重い心臓疾患が見つかった。

前兆といえば、疲れやすかったり、少し息が切れたりする程度だったという。

《四七歳だった私にとって、多少の体調不良はすべて、更年期障害というひと言で片付けられるものだった》《今思えば、もっともっと自分を大切にしていればよかった》

令和3年に出版した闘病記『更年期障害だと思ってたら重病だった話』(中央公論新社)には、自責の念がつづられている。重病の急性期かもしれないのに更年期症状と決め込んでしまっている女性たちの目に留まってほしい、という願いをタイトルに込めた。

「いまの更年期世代には、家族を優先することが愛の証しだと思っている人もいるように感じるが、そんな考えは捨てていい。家族にとっての幸せは、あなたが健康でいること」だと力説する。

見分けにくい甲状腺疾患の疑いも
更年期症状の陰に隠れて兆候を自覚しづらい疾患は他にも複数ある。浜松町ハマサイトクリニック(東京都港区)で婦人科を担当する吉形玲美医師によると、更年期症状と見分けにくい病気の代表例に、甲状腺疾患が挙げられる。

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進(こうしん)症は発汗や体のほてり、動悸(どうき)など。逆に甲状腺ホルモンの分泌が低下する甲状腺機能低下症になると、疲労感や冷え、むくみなどが起こる。

いずれも一般的な更年期症状と重なるため、吉形さんは更年期症状で受診した初診の患者には必ず、甲状腺ホルモン値を調べる血液検査を行うそうだ。

吉形さんが加えて注意を促すのが、生活習慣病について。「更年期以降は、体のさまざまな機能を守る女性ホルモン『エストロゲン』の分泌が低下し、動脈硬化症、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病が顕在化しやすくなる」と説明する。

見逃し予防の第一歩は、自治体や企業が実施する健康診断で血液検査の値の推移に気を配ること。具体的にはコレステロール値や血糖値、血圧などだ。

「正常の範囲内であっても数年前と比較して数値が悪いほうに近づいていたら、それは生活習慣病のリスクの兆しと捉え、食生活などを見直してほしい」と訴える。

月経の変化に気をつけて
閉経前の女性が気をつけたいのが月経の変化だ。更年期に入っている目安として月経周期が乱れることはすでに知られているが、月経ではない時期に起こる不正性器出血や経血量の増加などは、その陰に子宮筋腫や子宮内膜症、子宮体がんと関連がある子宮内膜増殖症などが隠れている場合がある。また、子宮内膜症は卵巣がんとの関連が指摘されているという。

「閉経が近くても月経トラブルを我慢せずに婦人科を受診することで、他の疾患を発見するきっかけとなる」と吉形さん。「更年期は人生後半戦をよりよく生きるために生活を見直すいいタイミング。自分から検査を受けに行くなどアクションを起こしてほしい」と話す。

引用元:
「更年期症状と決めつけないで」 閉経前後の体の不調には病が隠れているかも 3・8 国際女性デー(産経ニュース)