果物や野菜、穀物、ワインなどに含まれる抗酸化物質に、マイクロプラスチック(プラスチックの微小粒子)が生殖器系に及ぼす有害な影響を緩和する力がある可能性が、フィンランドと中国の研究機関でつくるFinland-China Food and Health Network(フィンランド・中国食品健康ネットワーク)の研究で明らかになった。
天然に存在する植物色素であるフラボノイドの一種アントシアニンは、果実や花の鮮やかな色彩の元となっている化合物。ベリー類、黒豆、サツマイモなど、紫、赤、青、黒の色彩をもつ食品は、アントシアニンを特に豊富に含んでいる。
今回、マウスとラットを用いた研究結果から、マイクロプラスチックが精子や精巣、卵巣組織に与えるダメージの一部をアントシアニンが相殺できる可能性が示された。
コーヒーカップから衣類乾燥機まで、生活の中に存在するあらゆるものからマイクロプラスチックは環境に放出され、今や地球上のいたるところで発見されている。私たちの身の回りにはマイクロプラスチックやさらに微細なナノプラスチックがあふれ、海溝の底からも人間の脳内からも検出されている。しかも、プラスチックは容易に分解されないため、時間経過とともに体内に蓄積される。
研究チームによれば、食物連鎖の頂点に位置する人間は、マイクロプラスチック汚染による重大なリスクに直面しているおそれが高い。
マイクロプラスチックの有害性
マイクロプラスチックは人体に有害な影響を及ぼすとの研究結果が続々と報告されている。マイクロプラスチックが体内でどのような相互作用を生じるのかはまだ科学的にはっきりと解明されてはいないが、ほぼ体中から見つかっており、代謝異常から精子数の減少まで数多くの健康問題との関連も指摘されている。
これまでの研究では、シアニジン-3-グルコシドという特定のアントシアニンに、マイクロプラスチックの毒性を防ぐ効果がある可能性が示唆されている。シアニジン-3-グルコシドは現在分かっている700種類以上のアントシアニンの一種で、食品に含まれていても副作用はほとんどない。
中国、フィンランド、カナダの研究者で構成されたチームは、マイクロプラスチックによって生殖機能がダメージを受ける可能性を「解決すべき緊急課題」と位置づけ、アントシアニンが持ちうる効能についてさらなる裏付けを得るべく科学文献の徹底的なレビューを行った。
生殖機能への影響
精巣内には血液を介して侵入する有害物質の作用から細胞を保護する血液精巣関門があるが、マイクロプラスチックはこの関門を通過し、炎症を引き起こすおそれがある。一部のアントシアニンに、血液精巣関門のバリア構造を強化して精子数などを改善する効果があることが分かっている。
マイクロプラスチックに暴露したマウスを使った実験では、アントシアニンが精子の質を改善し、精巣の損傷を軽減することが示された。また、男性ホルモンのテストステロンを産生するライディッヒ細胞を保護する効果もみられた。
女性の場合、マイクロプラスチックに含まれる特定の化学物質が卵巣組織に炎症を起こし、女性ホルモン値を低下させるおそれがある。マウス実験によれば、アントシアニンには卵巣組織を保護してエストロゲンなどのホルモン値を回復させる効果があるようだ。
研究チームは今回発表した論文が、マイクロプラスチックの悪影響に対抗しうるフラボノイドの可能性を解明し、その効能への認識を高める一助になることを期待している。と同時に、アントシアニンが実際にマイクロプラスチックとどのように相互作用するのかを正確に理解するには、さらなる研究が必要だとも警告している。
この研究でレビューの対象となった研究は齧歯類を使った実験に基づいており、人体で必ずしも良い結果が得られるとは限らないからだ。とはいえ、アントシアニンがマイクロプラスチックの人体への有害な影響を軽減する「天然化合物の探索」において「有望な候補として浮上している」のは事実である。
中国・西安交通大学の機関誌Journal of Pharmaceutical Analysisに掲載された論文に、研究チームはこう記している。「これらのメカニズムを理解することで、(マイクロプラスチックなどの)環境汚染物質からヒトの健康な生殖機能を守るためのアントシアニンを活用した治療介入の開発につながる貴重な知見が得られるだろう」
(forbes.com原文)
引用元:
マイクロプラスチックの体内毒性、果物の抗酸化物質で軽減可能か 研究結果(ForbesJAPAN)