早期乳がんに新たな治療選択肢が加わっている。岐阜県・中部国際医療センター乳腺外科/乳癌治療・乳房再建センターのコ丸剛久副部長に話を聞いた。
トリプルネガティブ乳がん…新たなメカニズムの薬の登場で診療はどう変わる?
新たな治療選択肢とは「ラジオ波焼灼療法」だ。乳がんの中に細い電極針を差し込み、ラジオ波という電流を流して、がん細胞を死滅させる。肝臓がん、肺がん、悪性骨腫瘍などで保険適用となっていたが、2023年12月、乳がんも保険適用となった。
「切らないので、体への負担が小さい。傷は数ミリ程度の針穴程度で、乳房の形が変わらないので、個人的には精神面への負担が小さいことにも着目しています」(コ丸副部長=以下同)
中部国際医療センターでラジオ波焼灼療法を受けた70代の乳がん患者は、乳がんと診断された時、看護師に「もうおばあちゃんだから、胸のことは気にしていない」と話していた。しかし治療後、乳房が変化なく残っているのを見て、非常に喜んでいたという。
早期乳がんの治療は、がんを取り除く手術と、薬物療法や放射線治療を組み合わせて行うのが標準だ。
「手術には乳房の一部を切除する温存療法と、全摘術があります。温存療法は一部ではあっても切除は切除なので、乳房が変形したり傷が残る可能性があります。全摘術は、術後の乳房再建が保険適用となって以来、件数が増えていますが、『乳房を切らなくて済むのなら』といった患者さんが少なからずいます」
そういったニーズに応えるのがラジオ波焼灼療法になる。心身への負担が小さくても、がんの取り残しがあれば問題外だ。乳がんへのラジオ波焼灼療法は当初“切らない治療”として注目を集め、自由診療で行われていたが、再発・転移のケースが報告された。そこで適正使用と保険適用を目的に、2013年から臨床試験(RAFAELO試験)が開始された。
その前年に発表された全国8施設の多施設共同研究、39例の結果では再発率10%。「乳癌診療ガイドライン治療編2011年版」では、エビデンスが不十分であることから推奨グレードC(実践することは基本的には勧められない)だったが、RAFAELO試験がこれを変えた。
13年8月から17年11月までに9施設で372例が集まり、22年、5年間のデータが全て集まってから解析。乳房温存手術と同等の根治性があり、高い整容性を保てることが確認され、23年に保険適用に至った。
■基準を満たした施設、医師のみ実施可能
ラジオ波焼灼療法の乳がんの対象は「直径1.5センチ以下の早期乳がん」など厳密に定められている。乳がんの形は円形とは限らず、おたまじゃくしのような形もある。おたまじゃくしの“胴体”が1.5センチ以下でも、“尻尾”の部分を含めた大きさが1.5センチ超なら、適応とならない。
「実際に対象となるのは、肌感覚として早期乳がんの1割前後」
ラジオ波焼灼療法では術後の放射線治療がセットだ。これは温存療法でも同様。放射線療法終了後、3カ月前後で吸引式針生検でがん細胞の焼き残しがないかを確認し、見つかった場合は手術で切除する。
「RAFAELO試験では5年間の無再発生存割合を評価項目としており、長期的にも一定の評価はできると思います。ラジオ波焼灼療法の適応であっても、全摘、温存療法も含めてそれぞれのメリット、デメリットを説明し、最終的には患者さんが決定します」
ラジオ波焼灼療法は、どこの施設でも受けられるわけではない。施設基準、そして治療を実施できる医師にも基準がある。たまたま受診した病院、医師がそれに該当していない場合、ラジオ波焼灼療法の適応に合致していても、受けられない。
「ラジオ波焼灼療法という選択肢がある」ということは、頭の片隅に置いておきたい。
▼“切らない治療” 他にも凍結療法や集束超音波療法があるが、臨床試験は行われていない。ラジオ波焼灼療法は第三相臨床試験でエビデンスが得られ、適応の患者が選定されたことで標準治療に加わった。
引用元:
早期の「乳がん」治療で新たな選択肢 乳房を切らないラジオ波焼灼療法が23年末から保険適用で実施(Yahoo!ニュース)