不妊治療などの生殖医療の中で、精子や卵子の提供を受けることができる人を法律婚の夫婦に限るとする法案が年内にも成立する。事実婚やLGBTQカップル、独身者らを中心に危機感が広がっている。AERA 2024年11月4日号より。

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 コロナ禍に、自分のほしいもの、自分が感じる幸せについて深く考えた。

「婚活経験もありますが、出会いを待つのではなく、『自分で選び取りに行けばいい』と思った時、目の前がパーッと輝き始めました」

 そう振り返る女性(46)は当時40歳。かつては「このまま独身だったら養子が欲しい」と考えたこともあったが、戸籍上の親子になれる特別養子縁組を志願できるのは、法律婚の夫婦に限られている。女性にパートナーはいなかったが、出産可能な年齢で経済的にも自立していた。

■精子バンク利用し母に

「だったら自分で産むのもありかもしれない」と考えていたところ、デンマークに本社がある「クリオス・インターナショナル精子バンク」の記事を偶然目にした。ウェブサイトを覗いてみると、ドナーの健康状態や人格がわかるような情報が詳細であることや、「家族を持ちたい人の役に立ちたい」という思いが明記されていたことから、信頼できる気がした。

 子どもが18歳になった時に希望すればドナーの氏名、生年月日、最終登録住所の情報がわかることも気持ちを後押しした。日本窓口の担当者にメールで問い合わせたところ「どんな女性でも母親になれる権利はある」という言葉をかけてもらい、第三者の精子提供を受けて母親になることを決意したという。

 ドナーは同団体のウェブサイトで候補者の「声」を音声ファイルで聞き、最終的には「自分の直感」を信じて選んだ。精子はドライシッパー(液体窒素輸送容器)に入って海を渡ってきた。当初は「そんなに早く妊娠できないだろうから、ゆっくりと気持ちの整理をしていこう」と思っていたが、4回の人工授精の後、1回目の体外受精で妊娠。「体調は悪くならず、仕事への影響はほとんどなく、走り出したら全てがスムーズに進んでいった感じです」と振り返る。そして2022年、選択的シングルマザーとして長女(2)を日本で出産した。
現在は生活の拠点を海外に移した。残業がなく子どもに寛容な海外の方が子育てをしやすいと判断したからだ。勤務先のすぐ近くに住み、できる限り、娘との時間を確保しているという。ひとつひとつの出来事が愛おしく、母親として慌ただしくも充実した日々が過ぎていく。

「父親不在で子どもが寂しい思いをしないか不安になることもあります。でも、ドナーチャイルドは一般の子どもと何も変わりがなく、親子のコミュニケーションが重要という海外の大学の研究データもあります。娘には毎日、会いたくて仕方がなかったことや大好きという気持ちを伝えています」

■誰のための法案なのか

 女性がいま最も気になっているのは、日本の「特定生殖補助医療法案」に関するニュースだ。骨子はいくつかあるが、その中に「精子や卵子の提供を受けられるのは法律上の夫婦に限定する」ことが示されているのだ。法案は年内の成立が濃厚とみられている。女性は「世界的に多様性が重んじられる風潮の中、法律の内容は逆行していると思います」と危機感を口にする。

 不妊カウンセラーで、自身も第三者からの精子提供で子ども2人を出産した経験のある伊藤ひろみさんは、今回の法整備について「メリットよりも、デメリットの方が大きいと感じています」と指摘する。

 法律婚の夫婦にとっては人工授精に加え、これまで認められていなかった体外受精も可能になる。しかし、法律婚をしていない人たちは、これまで法律上は可能だった提供された精子や卵子による医療が受けられなくなるのだ。冒頭の女性のように、子どもを持ちたいシングルや、LGBTQカップルもいる。23年には精子提供の対象者拡大を求める署名が1万筆を超えた。

「当事者が納得していないのに、『誰のための法案ですか?』と疑問に思います。もっと国民的に議論すべきテーマだと思っています」(伊藤さん)

引用元:
「特定生殖補助医療法案」年内成立へ 精子や卵子の提供を受けることができるのは、法令婚の夫婦に限定(Yahoo!ニュース)