国の方針変更で子宮頸(けい)がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種機会を逃した女性向けの救済措置「キャッチアップ接種」が来年3月末で終了するのを前に、医療関係者が接種率の低さへの焦りを募らせている。日本産科婦人科学会(理事長・加藤聖子九州大教授)は先ごろ、横浜市内でセミナーを開き、通常なら最短で半年かかる期間を約4カ月に短縮する「ショートコース」を紹介。対象者に11月までの1回目接種を呼びかけた。(阿部博行)
キャッチアップ接種は、1997〜2007年度生まれで24年度に17〜27歳となる女性が対象。いずれも国が接種を呼びかける「積極的勧奨」を一時的に差し控える方針を決定したことで自治体からの情報が届かず、ワクチンの接種機会を逃した人たちだ。来年3月末まで公費で3回接種できるが、期限を過ぎると費用は自己負担となる。
国内の子宮頸がんの予防について討論する講演者ら=いずれも横浜市西区で
標準的な接種スケジュールでは、1回目から3回目まで最短6カ月かかるため、厚生労働省や各自治体は9月末までの接種開始を呼びかけていた。その時期は既に過ぎたが、未接種者にあきらめず接種してもらう対策が課題となっている。
セミナーで帝京大学医学部の長阪一憲教授は、1回目から1カ月後に2回目を打ち、その3カ月後に3回目を打つ短縮日程に言及し、「11月に1回目を接種すれば、(公費負担の)期限内に最後まで打てる可能性がある」と説明。年末年始は医療機関が休みとなるため、希望者は予防接種を実施する市町村の担当者に相談し、準備する必要があるとも話した。
22年度の都道府県別接種率を試算した厚生労働省の資料によると、県内のキャッチアップ接種率は5・2%と5番目の低さで、全国の6・1%も下回った。同学会の子宮頸がん検診・HPVワクチン普及推進委員会の宮城悦子委員長(横浜市立大教授)は「これから子どもを産み育てる10代から20代の接種率が著しく低いという大ピンチの状況に日本は陥っている」と危機感を示した。
子宮頸がんは、性交渉によるHPV感染が主な原因とされ、国内では年間約1万1千人の女性が新たに患者となり、約3千人が亡くなっている。子宮摘出や頸部(けいぶ)円すい切除の手術を受け、抗がん剤治療を続ける患者も少なくない。
セミナーでは、子宮頸がん検診の世界的な潮流となりつつある「HPV検査単独法」について、大学の研究者らが解説。横浜市医療局地域医療部がん・疾病対策課事業推進担当課長の高木大輔医師は、本年度の導入をめざす同市の準備状況を報告した。
<ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン> 欧米諸国に普及し、国内でも2009年10月に薬事承認され、販売が始まった。13年4月に小6〜高1相当の女子の定期接種に位置づけられたが、接種者の体調不良の声が相次ぎ、国は同年6月に定期接種を継続しつつ、積極的勧奨は一時的に差し控える方針を決定。これにより多くの女性が接種機会を逃し、当初70%を超えた接種率は1%未満に落ちた。国は安全性が確認されたとして22年4月に勧奨を再開。同時に始まった救済措置のキャッチアップ接種は、性体験の少ない中高生の定期接種より感染予防効果が下がるが、有効性は確認されている。
引用元:
HPVワクチン 4カ月で接種完了 17〜27歳のキャッチアップ促進へ 日本産科婦人科学会、短縮コース紹介(東京新聞TOKYOWeb)