精神障害は、若者の認知機能低下との関連が報告されており、幼少期から青年期にかけて認知機能の発達および精神的健康に影響を及ぼす要因の特定が望まれている。フィンランド・University of JyväskyläのEero A Haapala氏らは、児童の身体活動と栄養研究(PANIC Study)のデータを解析。幼少期からの良好な運動機能が青年期の良好な認知機能および精神的健康に関連することを明らかにしたと、Sports Med(2024年9月10日オンライン版)に発表した。(関連記事「思春期の引きこもりと不調が自殺に強く関連」)

6〜9歳児241例が対象
 幼少期から青年期にかけては脳の構造と機能に大きな変化が生じ、社会的行動や健康関連行動にも顕著な変化が表れる。認知機能の発達および精神的健康に重要な時期であるため、問題も起こりやすい。青年期における精神障害の有病率は25〜30%と推定され、青年の3分の1がうつ病リスクを有するとの報告もある。

 小児〜青年期の心肺機能や筋力は認知機能と正の相関関係にあることが知られているが、その大半は横断研究による報告で長期の追跡調査は不足している。Haapala氏らは、フィンランド・クオピオの小児を8年間追跡したPANIC Studyのデータを解析し、小児期の運動機能の変化と青年期の認知機能および精神的健康との関連を検討した。

 対象は、2007〜09年に小学校に入学した241例(女児112例)。まず心肺機能〔最大出力(Wmax)、最大酸素摂取量(VO2peak)〕、運動能力(5mシャトルラン×10回)、筋力(立ち幅跳び、握力)などをベースライン時(6〜9歳時)、2年後(8〜11歳時)、8年後(15〜17歳時)に評価し、平均スコア(運動能力は低値、その他は高値ほど良好)と変化スコアを算出した。

 次に、調査開始2年後にCogStateテストバッテリーで精神運動機能、注意、ワーキングメモリータスクにおける反応時間、ワーキングメモリーの正確さ、視覚記憶と学習を、8年後にはRaven's Standard Progressive Matricesで非言語的推論スキルを評価し、全般的認知スコア(高値ほど良好)を算出した。

 さらに、調査開始8年後にCohen's Perceived Stress Scaleで知覚ストレスの尺度(高値ほどストレスが強い)を、Beck's Depression Inventoryでうつ病の尺度(高値ほど抑うつ症状が強い)を評価した。

平均運動能力が高いほど認知機能が高い
 年齢、性、親の教育歴を調整した解析の結果、運動能力が高いほど全般的認知スコアが有意に高かった(β=−0.164、95%CI −0.318〜−0.010)。一方、知覚ストレス、抑うつ症状とは逆相関することが示された(順に、β=0.182、同0.032〜0.333、β=0.181、同0.028〜0.333)。ただしスクリーンタイムを調整すると抑うつ症状との関連は消失した(β=−0.142、同−0.007〜0.291、P=0.062)。

 心肺機能は、知覚ストレス(Wmax:β=−0.166、95%CI −0.296〜−0.036、VO2peak:β=−0.149、同−0.295〜−0.002)、抑うつ症状(β=−0.276、同−0.405〜−0.147、β=−0.247、同−0.393〜−0.102)と負の相関を示した。Wmaxはスクリーンタイムを、VO2peakは身体活動またはスクリーンタイムを調整すると知覚ストレスとの関連は消失した(順にβ=−0.118、同−0.250〜0.015、P=0.081、β=−0.120、同−0.269〜0.031、P=0.120、β=−0.115、同−0.264〜0.034、P=0.129)。

 心肺機能変化スコアは、知覚ストレス(Wmax:β=−0.158、95%CI −0.312〜−0.003、VO2peak:β=−0.220、同−0.395〜−0.044)、抑うつ症状(β=−0.216、同−0.371〜−0.061、β=−0.257、同−0.433〜−0.080)と負の相関を示した。スクリーンタイムを調整後は、Wmaxのみ関連が消失した(順にβ=−0.094、95%CI −0.252〜0.064、P=0.244、β=−0.139、同−0.297〜0.018、P=0.083)。

 立ち幅跳び変化スコアは、女児では抑うつ症状と負の相関を示したが(β=−0.256、95%CI −0.457〜−0.056、P=0.013)、スクリーンタイムを調整すると関連は消失した(β=−0.178、同−0.380〜0.025、P=0.086)。男児では関連がなかった(β=−0.061、同−0.247〜0.125、P=0.515、交互作用のP=0.032)。

 以上から、Haapala氏らは「幼少期から青年期における運動能力の高さが青年期の認知機能の向上に関連していた。また、心肺機能の高さと心肺機能の向上は良好な精神的健康につながること、男児と比べ女児は下半身の筋力向上が精神的健康にとってより重要であることが示された」と結論。「若者の精神的健康を維持するには、負の相関が示唆されたスクリーンタイムを減らし、身体的健康を向上させることが有益と考えられる」と付言している。

引用元:
幼少期からの体力向上が精神的健康に益(時事メディカル)