がん細胞同士であっても、大きな違いがある例は少なくない。米ダナ・ファーバーがん研究所の分子生物学者コーネリア・ポリヤック氏は、一人の女性が持つ一つの乳がん腫瘍内に、非常に大きな分子的および遺伝子的な多様性があることを発表していた。がん細胞は互いにまったく同じクローンではなく、遺伝子的にも物理的な特性でも非常に多様になり得る。
これは、ホルモン療法などの治療では、がん細胞を必ずしも根絶できるわけではないことを意味している。一部の細胞は生き残り、より攻撃的で治療法の少ない「トリプルネガティブ乳がん」腫瘍の種となる可能性があると、ポリヤック氏は言う。(参考記事:「乳がんの転移は睡眠中に加速、血中のがん細胞が増え「攻撃的」に」)
がん対免疫、形勢逆転でがんが攻撃的に
治療しやすい乳がんを発症する女性たちがいる一方、治療が成功したかのように見えた数十年後に再発する女性がいる理由を、遺伝的に受け継がれる免疫の違いからどのように説明できるだろうか。カーティス氏と博士研究員のキャスリーン・フーラハン氏はそこに注目した。
この種の調査には多くのデータが必要となるため、フーラハン氏らは、がん登録簿をはじめとするさまざまなデータセットから得られた情報をつなぎ合わせた。
6000件以上の乳がん腫瘍のデータの分析からは、細胞の持つ「生殖細胞系列(ジャームライン)由来」のエピトープの量はさまざまで、がんがどのくらい攻撃的になるかを予測するのに役立つことが示された。生殖細胞系列由来のエピトープは、患者の遺伝子の型によって決まる。
氏らの発見によると、生殖細胞系列由来の目立つネオンサイン(エピトープ)を多く持つ女性は、免疫が早い段階でがん細胞を見つけて排除し、がんが広がるのを防ぐ傾向が高かった。
だがしかし、がんがそれでも免疫の監視を逃れた場合、「形勢は逆転します」と、スタンフォード大学のサイトに掲載された記事でフーラハン氏は語っている。そうしたがんは免疫系を出し抜くことを覚え、より攻撃的になる傾向にあり、付近の組織に広がったり、遠く離れた部位に転移したりする場合があるのだ。
乳がん予防の未来
この研究は、女性をリスクの高いグループと低いグループに分けるうえで役立つ可能性があると、ポリヤック氏は言う。これはがんの予防で重要な要素だ。「目立つがん細胞を免疫が見つけ出す能力が低い女性」を特定して、彼女たちにマンモグラフィーなどの検査をより頻繁に受けてもらうことが可能になる。
「この研究は氷山の一角に過ぎません」と氏は言う。「詳しいことがわかってくるほど、リスクをより正確に予測できるようになります」(参考記事:「乳がんマンモグラフィー、超音波の追加は「根拠不十分」、反発も」)
カーティス氏によると、今回の結果はがんの発生についての理解を深めるだけでなく、乳がんをはじめとするさまざまながんに対する、より効果的な精密医療を開発するうえでも重要だという。将来的には、特に攻撃的な種類の乳がんを発症するリスクの高い人々の予測と、その治療法の開発に役立つ遺伝子検査を実現したいと氏は考えている。
「現在の検査体制はやや場当たり的です」とカーティス氏は言う。「治療や検査の方法を変えなければ、死亡するリスクの高い女性たちに十分な対応ができているとは言えません。それはわれわれの落ち度なのです」
引用元:
深刻な乳がんを進化させる遺伝子の型があると判明、予防に期待(NATIONAL GRAPHIC)