自分らしく生き生きと働く女性たちが、ポジティブな気持ちになれたり、仕事の役に立ったりする「ハッピーアイテム」を紹介します。
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小坂愛(44)
三井住友海上火災保険 総合営業第一部 海上課
国内外の物流で、事故などのトラブルに備えた損害保険商品の営業を担当しています。今年4月、将来の出産のため卵子凍結サービスを利用する女性に向けた、「凍結卵子専用保険」を新たにスタートさせました。
この保険は、医療機関で採取・凍結した卵子が輸送時の事故などで死滅してしまった場合、1個あたり最大2万5000円の保険金を支払うもので、38歳までに採取した卵子が対象。カウンセリングから医療機関の紹介、卵子の輸送や保管まで手がける「LIFEBANK」(東京都中央区)と連携したプロジェクトで、同社の高橋美輪社長に“飛び込み営業メール”を送ったのがきっかけです。
前例のないチャレンジ
40代で一般職から営業に転身した小坂愛さん
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卵子凍結は元々、抗がん剤や放射線のがん治療を受ける若い女性が出産の可能性を残すための技術でしたが、晩婚化が進む中、近年は女性全般へと広まっています。
かかる費用は30〜50万円と高額ですが、東京都が昨年、費用の助成を開始したこともあり、ニーズは高まっていくはず。高橋社長の、「人生の選択肢を増やす方法をより多くの人に知ってほしい」という熱意が伝わり、安心して利用できるようにするには、輸送や保管中の偶発的な事故による損害を補償する保険が必要では、と提案しました。
ただ、日本では前例のない保険ですから、社内から「そもそも商品になるのか」と懐疑的な声も上がりました。その点は、東京都の取り組みが追い風になりましたね。次のハードルは、既存の保険の枠組みにどう落とし込むか。「『ヒト』でない卵子は民法上『モノ』にあたる」という弁護士さんのアドバイスを受け、「動産総合保険」でいけそうだ、と。他にも、保険金額は? 事故が起きる確率を検証した上で設定する保険料率はどうする? ビジネスとして利益が見込めるのか?など、とにかく難問が山積みで……。
アメリカを始め海外の文献を参考にしながら、商品部など社内のさまざまなチームの協力を得て、実現にこぎ着けることができました。
30歳を過ぎて結婚した私自身、約5年の不妊治療を経て娘を授かりました。結婚当初は「そのうち妊娠するだろう」なんて軽く考えていましたが、「あれ……?」。仕事をしながらの治療が、肉体的、精神的にすごくつらかった時期もあります。卵子凍結の広がりがあと10年早ければ、私も2人、3人のママになれたのかな――。若い女性が将来、同じように悔やんだり、悩んだりしないように、という願いが根っこにあったからこそ、やり遂げることができたのかもしれません。
一般職から転身、遅咲きの新人として
入社して20年以上たちますが、営業の最前線に立つようになったのは40代になってから。まだ経験2年ほどの“新人”です。長く一般職として、事務など、営業を担う男性社員のサポートをしてきました。日々のルーティンをたんたんとこなす感じで、「もう仕事はいいかな」と、退職がちらついたことも。変わったのは、出産後でしょうか。「やっぱり社会とつながっていたい」。育休中にこれまで意識していなかった自分を発見し、仕事に対し前向きな気持ちを抱くようになったんです。
その後、新しい人事制度が導入されたことも大きかったですね。「総合職」「一般職」というカテゴリーが撤廃され、「総合社員」として、転勤の可否によって「グローバル」「エリア」「ワイドエリア」の職種を選択できるように。子育て中のため「エリア」を選びましたが、上司に「営業でやってみないか」と誘われました。
「夫は『子育ては僕がするよ、がんばって』と応援してくれる」と話す小坂さん
10代の頃、英語の先生に「あなたは将来サービス業に就くといい」と言われたほど、昔からたくさんの人と接するのが大好き。「私で良ければ!」と即答していました。
チャンスが巡ってきて、もちろんうれしかったけれど、同時に、不安だらけでもあった。何せ未経験ですから、「分野を超えて新規事業の開拓を」というミッションにも、何をしたらいいのかな……と戸惑いながらのスタート。「小坂さんにしかできないことをやったら?」と上司に励まされて頭に浮かんだのが、注目度がどんどん上がっている「フェムテック」というキーワードでした。周りの若い男性社員になくて、私にあるもの。それは娘を育てるママだ、ということ。
それからは、フェムテック業界の研究をして、スタートアップ企業にひたすらアプローチする日々。「ぜひ一緒に何かやりませんか」とメールをするのですが、保険会社の社員からのメールって、「あぁ、保険加入の勧誘か」ってスルーされがちで。返信をいただけるのは1割ぐらいでしょうか。くじけそうな時にLIFEBANKの高橋社長と出会い、話し合いを重ね、「これだ!」と手応えを感じました。保険を通し、女性の多様な生き方を支えられる、と。
凍結卵子専用保険の反響は大きく、多くの問い合わせをいただいています。東京都に続き、山梨県も今年度から助成事業を始めているので、両自治体と連携していくための取り組みも進めています。20代、30代は、仕事も遊びも存分に楽しめる時期ですが、一方で、女性の「 妊孕にんよう 性(妊娠する力)」は20代後半から徐々に衰えていきます。将来の可能性を残すためにも、卵子凍結という方法があることを知ってほしいです。
娘からの手紙に思わず涙
仕事でヘコんだ時にパワーをもらう
娘は8歳になりました。ハッピーアイテムは、娘からの手紙です。昨年の私の誕生日、夫と一緒に用意してくれたプレゼントに、この手紙が添えられていて。
<ままへ、いつもおしごとおつかれさま>
一生懸命書いたのかな、と思わず泣いちゃいました。娘が赤ちゃんだった頃の写真と一緒に財布に入れ、持ち歩いています。写真を見ると、「こんなかわいい頃があったんだなぁ」なんてほのぼのしますが、今は自宅でリモートワークする私の姿をよく観察していて、「はい、三井住友海上の小坂でございます!」という電話の応答をまねすることも。朝の出勤時、「今日の服はママ、あんまり良くない」とダメ出しもされるんですよ。
40代半ばになり、これから更年期を迎えます。健康や体調面で何らかの変化が生じてくるでしょうが、子育ても仕事もまだまだ続きます。働く女性は、年齢に応じてさまざまなリスクに直面しますよね。そんな女性たちの「お守り」になるようなソリューションを、保険を通して提供できたらいいな、と考えています。
(読売新聞メディア局 山田恵美/撮影・秋元和夫)
引用元:
≪三井住友海上≫卵子凍結に専用保険「働く女性の可能性広げたい」(読売新聞オンライン)