金沢大学人間社会研究域学校教育系の吉村優子教授,附属病院周産母子センター(小児科)の三谷裕介講師,医薬保健研究域医学系の和田泰三教授,菊知充教授,子どものこころの発達研究センターの池田尊司准教授らの研究グループは,北海道大学,秋田大学の研究者らと共同で,極低出生体重(※1)で出生した 5〜6 歳児において,ヒトの声に対して左半球の聴覚野の反応が大きいほど,言語能力が高く,一方で感覚特性として過敏の状態が高いことを報告しました。
極低出生体重(Very Low Birth Weight)は,言語や感覚運動などを含む認知発達に影響を与える割合が高いことが報告されています。 本研究グループらのこれまでの研究から,音声(ヒトの声など)によって引き起こされる脳反応(P1m) (図 1)(※2)は,幼児の言語発達の指標であることが示唆されていましたが,極低出生体重児における有効性についてはまだ解明されていませんでした。 さらに幼児において聴覚誘発反応(P1m) と感覚特性との関係は不明のままでした。そこで本研究では,1500g 未満の体重で出生した 5〜6 歳の子どもたちを対象に,ヒトの声に対する脳反応を小児用脳磁図(MEG)で捉え,言語発達や感覚特性との関連を調べました。その結果,これらの幼児において,ヒトの声によって引き起こされた左半球の脳活動の大きさと言語能力および感覚過敏(※3)の特性との間に統計学的に有意な相関がみられました(図 2,図 3)。
本結果を通して音声誘発反応(P1m)が言語能力と感覚過敏の重要な予測因子として機能することを明らかにしたことで,早期介入プログラムの開発や調整が可能になることが期待されます。聴覚誘発反応を利用したスクリーニングや評価ツールの開発は,早期に言語発達に関するリスクや個々の特徴を客観的に評価し,必要なサポートを提供することで,長期的な教育成果や社会的適応を改善する可能性があります。本研究は極低出生体重児の発達を適切に理解しサポートするための情報と手段を提供することを目指すものです。
本研究成果は,独国時間 6 月 21 日午前 0 時(日本時間 6 月 21 日午前 7 時)に科学雑誌『Pediatric Research』のオンライン版に掲載されました。
引用元:
音声反応が明かす 極低出生体重児の言語発達と感覚の特性(金沢大学)