パリ五輪で話題沸騰! 14歳の金メダリスト・吉沢恋選手はなぜ世界の頂点に立てたのか? 吉沢親子から学ぶべき子育てのヒントとは? 子育てに関する取材を20年以上続ける筆者が、「才能を開花させる家庭に共通する教育方針」を紹介します。(文/鳥居りんこ)

● 子の才能を開花させるために親がすべきこと

 現在開催中のパリ五輪。スケートボード・ストリートでは男女ともに日本勢が金メダルを獲得した。とりわけ、女子は14歳の吉沢恋選手が金メダル、15歳の赤間凜音選手が銀メダルと10代の若い力が躍動したことは記憶に新しい。

 特に吉沢選手の中学生とは思えないほどのしっかりとした受け答えに感心した人は多かったようで、彼女の成育環境にも注目が集まった。

 吉沢選手の父・功さんは練習環境を整えるために、保育士から時間の融通が利く介護職へ転職して娘を全面サポート(7月29日 朝日新聞)。送り迎え、練習の付き添い、さらには海外遠征費の半分を自己負担するなど、物心両面で吉沢選手を支えてきたという。

 しかし、いかに才能に恵まれていたとしても全てが順風満帆というわけではなかったようだ。

 各種報道によると、吉沢選手は小学校を卒業したら「引退」するつもりだったそうだ。転べば痛いし、怪我もする(事実、昨年6月のローマでの大会では硬膜外血腫という大怪我をしている)。その頃までは「やらされている感」もあったという。

 中学入学後「テニス部に申し込んできた」と告げた娘に功さんから出た言葉がある。

 「やめるのはいつでもやめられる。1回やめたら、またそこから始めて続けるのは大変だよ。自分のためになるから続けてごらん」(7月30日 NumberWeb)

 その真意は「けがと隣り合わせのスケボーは、技を決めるために勇気を振り絞って挑戦しなければならない。それは社会に出ても同じ。恐怖に打ち勝って1歩を踏み出さないと、やりたいことはできない。それを経験できるのは貴重」ということのようだ(7月30日 日刊スポーツ)。

 功さんは、子どもたちがお遊戯会や発表会で練習通りに力を発揮するにはどうすればよいかをいつも考えていた。「娘のコンディションをいかに上げて本番にもっていくかしか考えていない」(7月30日 日刊スポーツ)とインタビューに答えている。

 金メダルに輝いた吉沢選手は、練習をサポートしてきた功さんに対し「自分がパリで一番高いところに立てたよと言いたい」と感謝を口にした。オリンピックという大舞台で活躍するためには、個人の努力も当然だろうが、未成年であるならば、一番傍にいる親のサポートがいかに大切なのかが窺い知れるエピソードであろう。

 このような超一流のメダリストの親でなくとも、子育てには愛情と献身が必要だ。しかし、親も人間。子どもとの関わり方に自信が持てなくなったり、何が正解かが分からず悩み、日々、手探りのような状況に陥っている人のほうが多数派だ。

 筆者は20年以上にわたって子育て関連の取材をしているが、我が子の何らかの才能を開花(例えば、スポーツ・芸術・勉強など)させたご家庭にはある共通点があるように感じている。

すなわち「手をかけ・目をかけ・心をかけ」。幼い内はきちんと手をかけて育て、成長に合わせて、徐々に手を放していくのだが、様子をうかがいながらも直接的な手出しはしない。さらに、思春期に移行したら、そっと見守るほうを優先するという意味だが、要は、その時々に応じて、子ども自身が自分で考え、判断し、行動できるようにサポートしているのだ。

 そういう親たちに、子育て中に何を重視していたのかを聞くと

 1 好奇心を刺激する
2 子どもの「好き」を大切にしてあげる
3 比べるときは「横ではなく縦」を意識

 という類のことを答えてくれるケースが多い。 

 1の好奇心は、幼い我が子がまだ見聞きしていないことを経験させるということ。特別な何かに取り組ませるというよりも、日常生活の中でごく自然と行なわれている。

 例えば、近所の公園でブランコをこいだり、草花に触れたりなどもそれに当たる。これは、殆どの親が無意識に行なっていることだと思う。暮らしの中で「楽しいことをご紹介」という気持ちで我が子と一緒に遊び感覚で過ごしていたと言った母もいた。

 また、子どもが大きくなるにつれて、習い事を勧める親は大勢いるだろう。吉沢選手も幼少期には、水泳やピアノなど多くの習い事をしていたそうだ。これは想像だが、吉沢選手のご両親も愛娘に色々な体験をさせてあげようとしたのではないだろうか。

 2は子どもに小さな自我が芽生えた頃から、子ども自身の意思を尊重してきたということだ。良い生活習慣の確立という意味での躾は必要なので、何でもかんでもOKというわけではない。

 しかし、今日、着たい服、今、読んで欲しい絵本、ハマっている遊びなどは可能な限り、子ども自身の気持ちに寄り添うように努めてきたということだろう。特に、子ども自身が興味を持って「やってみたい」というものについては、積極的に後押ししてきたと答えてくれた親は少なくない。

 吉沢選手の場合、7歳の頃、兄に連れていかれたスケボーパークでスケボーと出会い「やってみたい!」から始まったとのこと。以来、両親は「子どもの習い事感覚」で練習に付き添い、応援してきたという。

 3の「比べるときは『横ではなく縦』を意識」というのは、他人(横)との比較ではなく、昨日、先月、あるいは去年といった過去の我が子と今現在の我が子という風に、我が子自身の成長を縦軸で見るという意味だ。親はついつい隣の子や何かの平均値と我が子を比べがちだが、他人軸を基準にすると元々持っている才能も伸び悩む。

 吉沢選手は、中学生になるまでスマホは禁止でSNSをやっておらず、女子の競技レベルを知る機会がなかったそうだ。そして、21年の東京五輪で西谷椛選手が金メダルを獲得した際の技が、自身が公園で完成させていた技と同じということをテレビで知り、「あ!私もこれできるじゃん!」とスイッチが入ったというストーリーは有名だ。

 五輪前には「誰かを気にするのではなく『戦うのは自分』 と思って、120%の力を出して、オリンピックで1位を取れるように頑張ります」との意気込みを語っている。

筆者の経験からしても子育ては楽しいものだ。もちろん、親の思うようになどなるわけがないのであるが、子どもが自分自身の意志の力で生きていくようになるまでの18年間。苦楽を分かち合って、共に成長している時代は、やはりかけがえのないもののように感じている。

 「お金の面では大変です。でも、子どものためですから」と明かしていた父である功さん。吉沢親子の努力が実って、本当によかったと思う舞台でもあった。

 聞くところによると、スケートボードの判定では、トリックの成功か失敗かではなく、チャレンジングな姿勢も評価対象となるそうだ。

 これは何もスケートボードの世界だけではなく、ごく普通の子育てにも当てはまると思う。結果にとらわれるのではなく、やると決めたことを地道にひたむきにやり続ける力や、失敗しても簡単には諦めない心を育てていきたいものだ。それには、親の温かなサポートが必要なのは言うまでもない。

鳥居りんこ

引用元:
【14歳の金メダリストに学ぶ】子どもの才能をぐんぐん伸ばす家庭の「3つの教育方針」とは?(yahoo!ニュース)