定期的に性交渉をしても、自然妊娠に至らない不妊症。原因の半分は男性が関係しているとされます。今年2月、日本泌尿器科学会は「男性不妊症」の診療指針を初めて作成しました。症状から検査、治療法まで詳しく解説しています。(安藤奈々)
精子状態まず検査
男性不妊症は、生殖機能の障害のタイプで大きく三つに分けられます。「造精機能障害」は精子が正常につくられない状態で、厚生労働省研究班の調査では、最も多い82%を占めています。勃起や射精ができない「性機能障害」は14%、精子の通り道(精管)に問題が生じている「精路通過障害」は4%です。
障害のタイプで治療法が変わるため、検査でどの障害に該当するかを判定します。精液検査で精子の数や動きを調べ、精巣の大きさや硬さを視診や触診で確かめます。また、血液検査でホルモンの値を調べます。
性機能障害のうち、勃起不全(ED)では、症状を改善する飲み薬による治療が基本になります。男性ホルモンが十分に作られない病気が原因で、造精機能障害が起きている場合は、注射でホルモンを補充します。
手術は、造精機能障害の中で4割近くを占める「精索静脈 瘤りゅう 」や、精液に精子のない「無精子症」で行われます。精索静脈瘤は、精巣につながる静脈内の弁が十分に機能せず、血液が逆流して膨らんでいる状態です。精巣の温度が高くなるなどして精子をつくる機能が低下します。脚の付け根を数センチ切り、原因になっている静脈を糸で縛って逆流を止めます。
無精子症は、精路通過障害のため精子が射出されない「 閉塞へいそく 性」と、造精機能障害で精子がないか、極めて少ない「非閉塞性」に分けられます。閉塞性は、幼少期に受けた 鼠径そけい ヘルニア(脱腸)の手術による合併症や、生まれつき精管が細いことなどが原因になります。手術で精管をつくり直して通りを良くします。
非閉塞性では、精巣を切開し、顕微鏡で精子を探し出して採取します。「マイクロ TESEテセ 」という手法で、2022年に公的医療保険の対象になりました。この方法で精子を採取できる人は3〜4割です。
夫婦協力が不可欠
千葉県の会社員男性(37)は4年前、非閉塞性の無精子症と診断され、妻と相談し、治療を決心しました。23年11月に受けたマイクロTESEで精子が見つかり、体外で精子を卵子に注入する「顕微授精」で妊娠に成功。年内に子どもが生まれる予定です。男性は「診断時は『まさか自分が……』と落ち込んだ。手術を受ける怖さや不安もありましたが、今は本当にやって良かったと思っています」と喜んでいます。
指針作成委員長で、順天堂大浦安病院(千葉県)泌尿器科教授の辻村晃さんは「男性不妊症は珍しくなく、治療の選択肢も広がっています」と話します。
日本生殖医学会のウェブサイトで生殖医療専門医に認定された泌尿器科医のいる医療機関を確認できます。
東邦大泌尿器科教授の永尾光一さんは「治療には夫婦の協力が欠かせません。前向きになれない人もいるので、素直に話し合える関係を築いておくことが重要です」と話しています。
引用元:
不妊の原因 半分は男性が関係 生殖機能の障害は3タイプに分類…診療指針が初めて登場(yomiDr.ヨミダクター)