将来の妊娠・出産に向けて卵子を凍結保存する「卵子凍結」に注目が集まっている。昨年度から費用の助成を開始した東京都の説明会には担当者の予想を超えた希望者が参加し、今年度は対象を10倍に拡充した。ただ、万能な技術ではなくリスクもあり、専門家は「個別に丁寧な指導・助言が必要」としている。

説明会に9600人
女性の社会進出などの影響で晩婚化が進み、第1子出産の平均年齢は令和4年で30・9歳(昭和50年は25・7歳)。一方で女性の「妊娠力」は30代半ばから急激に下がるとされる中、女性にとっての選択肢として浮上したのが、卵子凍結だ。

凍結卵子が保存されたタンク=2013年12月、大阪市西成区
凍結卵子が保存されたタンク=2013年12月、大阪市西成区
都は5年度、都内在住の18〜39歳(採卵実施日の年齢)の女性を対象に卵子凍結費用として最大30万円を助成する制度を開始。都福祉局によると、初年度の助成対象は200人だったが、説明会には約9600人が申し込み、3千人以上が参加意思を示した。

インターネット情報提供会社「ビッグローブ」(東京)が昨年2月、18〜25歳のいわゆる「Z世代」を対象に行った調査で「将来、子供がほしくない」が45・7%に達するなど、若年層に子供を欲しない意識が少なからずあるとされる中、意外ともいえる結果。

都の担当者は「反響は予想を大きく上回った」とし、小池百合子知事も「多くの女性が子供をいつか産み育てたいと希望している証だ」とみる。

東京都の小池百合子知事
東京都の小池百合子知事
反響を受け都は6年度、助成対象を10倍の2千人に拡充。他自治体でも同様の動きがあるほか、企業の助成、卵子凍結を対象とした保険商品の販売も始まっている。

高齢出産のリスク
とはいえ、卵子凍結は「子を授かることを保障する技術」ではない。例えば、精子を提供する男性側の年齢が高ければ、若い状態で保たれた卵子を解凍しても妊娠・出産に至る確率は下がる。卵子凍結で妊娠しても母体の加齢が進んでいれば身体的な負担・リスクは若い時に比べて高くなる。

排卵誘発剤などを使うため副作用を考慮する必要があるほか、一度に採取できる卵子の数・質には個人差があり、凍結保存に至る個数も人ぞれぞれ。クリニックにより価格にばらつきがあるが、診察から採卵・凍結までに計数十万円、凍結卵子の保管に1つ当たり年間1万円程度かかるとされる。

不妊治療への公的医療保険の適用が拡大され卵子凍結についても助成が整いつつあるが、高額な医療であることは確かだ。

社会の変化必要
さらに、卵子凍結という手段が出産時期を先延ばしにし、結果的に出産年齢の高齢化を助長させかねないといった懸念もある。

卵子凍結希望者のカウンセリングを行う「プリンセスバンク」代表で、生殖工学博士の香川則子氏は「卵子凍結を含む生殖医療は、支払う金額に見合うリターンがないかもしれない体験。出産を望む人に何が必要なのか、個別に丁寧なコンサルティングをする必要がある」と指摘。

妊娠可能性が高い時期に、女性が出産かキャリアの二択を迫られがちな日本の社会環境の変化が必要だとして「妊娠・出産や子育てを社会で支える仕組みを整えることを優先するべきではないか」と話している。(大泉晋之助)



卵子凍結 将来子宮に戻す目的で、卵子を保存する技術。排卵誘発剤などで卵巣を刺激し、採取した卵子を凍結保存する。将来、解凍した卵子に精子を注入し子宮に戻す「顕微授精」が可能になり、母体の加齢が進んでも、卵子を凍結した時の年齢相応の受精率が期待できる。

引用元:
東京都の「卵子凍結」助成対象10倍に拡充 高い関心も専門家「個別に丁寧な助言必要」(産経新聞)