乳がん経験者向けの運動・食事指導を専門とする奥松功基さん(スポーツ医学博士/トレーナー)によれば、運動をするかしないかで、乳がんの再発リスクに歴然とした差が出るという。

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「世界中のさまざまな質の高い研究をまとめて再解析する研究(メタアナリシス)を乳癌学会が行った結果、運動をすることで再発リスクと死亡リスクは低下するというデータが発表されています」(奥松さん=以下同)

 日本乳癌学会の患者向けガイドライン(2019年版)では「適正体重を維持すること」「運動不足を防ぐこと」が再発予防として推奨されており、1週間にトータル1時間程度運動をする人は、まったくしない人と比べて再発リスクは25%低下。死亡リスクも、40%下がるというデータが示されている。

 乳がんを経験すると治療の影響で筋肉量が減りやすく、太りやすくなる人もいる。そうやって体脂肪が増えると、乳がん発症・再発に関係する女性ホルモンの産生量も増える。
「一方、がんの治療後、抗がん剤などの影響で10年分の筋肉量や持久力が減ることが論文で報告されています。乳がん経験者対象の持久力に特化した論文では、50代の乳がん経験者の女性の持久力は、60代のがんと診断されていない女性とほぼ同じというデータが発表されています」

 持久力が低下すると、疲れやすく、歩いたり動いたりすることがおっくうになる。次第に活動量が減り、筋肉量減少、体重増加につながる。加えて、活動量低下はさらなる持久力低下を招くので、より活動量が減る(=筋肉量減少&体重増加)という悪循環に陥ってしまう。

「しかし、がん治療で低下した筋肉量、持久力は、日常的かつ継続的な運動で、必ずアップすることも最新論文で報告されています」

 運動は、ホルモン療法の副作用で多く見られる関節痛を緩和させる効果も実証されている。乳がん治療で不安定になりがちなメンタルヘルスも前向きにする。
■スクワットと腹筋運動がお勧め

 奥松さんは、こんな経験をしている。フランスにあるWHO(世界保健機関)の研究機関に1カ月間留学したときのこと。がん経験者に特化したトレーニングジムを見学したところ、高い強度でマシンを使っている利用者がたくさんいた。こんなに高強度で大丈夫なのかと問うと、「論文で(がん経験者において)強度が高いトレーニングで筋肉を増やすことが大事というデータがある。論文通りに行わないとね」との返答だった。これ以降、奥松さんも乳がん経験者に対し、単に体を動かすだけでなく、筋肉量増加を意識したトレーニングを指導しているという。

「治療後いつから始めるのか、どの強度が適切かなど、人によって違います。ただし、軽々とできる負荷では筋肉量は増加しません。最初は重りなしから始めた人も、少しずつ強度を上げていくようにしています」
運動を始める時期や強度は、主治医に相談を。抗がん剤治療中で気分が悪い時は無理にする必要はない。乳がんの手術を受けた後、乳房再建手術までの間は激しすぎる運動は避けたほうがいいこともある。運動中、痛みが生じやすい姿勢もあるので、その場合は専門家の指導を仰いだほうがいい。

 まずは自宅で始めてみたいという人には、スクワットと、あおむけに寝て両脚を上げ下ろしするレッグレイズがお勧めだ。スクワットは体で最も多くの筋肉を占める下肢を鍛えられる。腹筋運動は多くの運動種目で使われる筋肉群であるため、腹筋が弱いと高い強度のトレーニングが行えない。運動効果を得るためにも外せない種目だ。1日10回を目安に始めよう。

「『運動によって体内の免疫が強化され、がん細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞の働きが活性化するなどの理由で、乳がん再発リスクが低くなる』とする論文も発表されています」

 重要なのは運動習慣をつくること。3カ月間継続できれば習慣化するといわれている。とにかく始めてみよう。

引用元:
「運動」が乳がん再発リスクを下げる…1週間トータル1時間で25%低下(日経ゲンダイヘルスケア)