年間1万1千人が子宮頸がんに罹患
子宮頸がんの主な原因は、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染と考えられている。HPVは女性の多くが一生に一度は感染するといわれている。
感染しても、ほとんどの人は自然に治癒するが、一部の人が持続感染し、数年から数十年かけて「異形成」という段階を経てがんになる。進行すると子宮を摘出しなければならない場合も出てくる。
国内では年間約1万1千人が罹患し、約3千人が亡くなっている。感染を防ぐHPVワクチンの接種や定期的な検診を通しての、早期発見・治療が重要とされている。
子宮頸がん検診ガイドラインで「推奨グレードA」
現在、20歳以上に2年に1回推奨している対策型の子宮頸がん検診は、子宮頸部の細胞を採取し、それを検査する「細胞診」を用いている。
国立がん研究センターが公表している「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年度版」では、「細胞診単独法」(対象:20〜69歳、2年に1回実施)と「HPV検査単独法」(対象:30〜60歳、5年に1回実施)は、ともに「推奨グレードA」と判定されている。
HPV検査と細胞診の併用は、課題が解決された場合に限り、対策型検診・任意型検診として実施できる「推奨グレードC」である。
30歳から60歳を対象、5年に1回の受診間隔に
今回の検討会で導入が決定された「HPV検査単独法」は、がんの原因となるHPV感染の有無を確認できるため、子宮頸がんの早期発見につながる可能性が高い。また、受診間隔が5年に1回と広がり、受診者の負担も大きく軽減され、受診率の向上も期待できる。
各市町村が「HPV検査単独法」を導入する場合、これまで通り20歳以上の女性には「細胞診単独法(2年に1回)」を行い、30〜60歳の女性には「HPV検査単独法(5年に1回)」を適用するとした
HPV検査単独法の流れ
HPV検査単独法は、大きく次のような流れで行われる。
HPV検査単独法で陰性の場合
5年後にHPV検査を受ける(30歳、35歳、40歳......と5歳刻みで受診)。
検査で陽性の場合
トリアージ細胞診を行う。トリアージ細胞診は、検診時に採取した検体を用いて細胞診を行うため、あらためての検体採取は不要。
トリアージ細胞診で「陰性」の場合であっても、発症のリスクが高いため、1年後の追跡検査を受ける。追跡検査で陰性になった場合は、5年後に検診を受診するという方法を繰り返していく。
トリアージ細胞診で「陽性」の場合、医療としてコルポスコープ・組織診の確定精密検査に回す。
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第40回がん検診のあり方に関する検討会 資料1 P.5(2023.12)より
長期の追跡を含む精度管理体制の構築が必要
HPV検査単独法による子宮頸がん検診の効果を担保するためには、HPV陽性者に対する長期の追跡を含む精度管理体制の構築が必要である。
そのため、検討会ではHPV検査単独法を実施するにあたって、市町村が満たす必要がある要件案を下記のように挙げている。
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第40回がん検診のあり方に関する検討会 資料1 P.8(2023.12)より
厚生労働省によると市区町村の13.8%にあたる238の自治体が既に「HPV検査」を実施しており、佐賀県では2019年に子宮頸がん検診に「HPV検査」を初めて全県下で無料導入した。
同県は子宮頸がんの死亡率が全国ワースト1位(2017年時点)で、早期がんよりも進行がんが多かったことから、早期発見のため導入を決めた。罹患者は30〜44歳に多いことから、同年齢を対象に細胞診と併用で「HPV検査」を行っている。
今回の検討会の決定を受け、厚労省は令和5(2023)年度中に指針改正を行う予定だ。同時に、HPV検査単独法に関わる詳細を記載した検診マニュアルも公表する予定となっている。
これにより今年4月より、体制整備、関係者の理解・協力等が得られた市町村から順次、指針に基づくHPV検査単独法の導入が可能となる。
自治体間の連携や職域でのがん検診に課題も
ただし、検討会では「5年の検診間隔の間に他の市区町村へ転出入する住民も少なくない。対象者を長期に追跡するデータベースの構築も求められる」との意見も出され、自治体間での連携や情報共有を実行するにあたっては、国による支援も求められてくるだろう。
また、30歳から60歳という推奨対象者は、まさには働き盛りの世代。働く女性の割合が今後ますます高まるなか、職域でのHPV検査単独法を精度・追跡管理も含めてどのような形で導入できるのか、多くの課題が残っているという意見も交わされた。
HPV検査単独法に関し、職域でのがん検診にどのようなスキームで導入できるかなども含めて、産業保健スタッフも今後の動向を注視していきたい。
引用元:
「HPV検査単独法」子宮頸がん検診に4月から導入 厚生労働省「がん検診検討会」より(健康支援リソースガイド)