「がん電話相談」の今回は乳がんが骨転移し、治療の選択に迷う50代女性の相談に、がん研有明病院の院長補佐で乳腺内科部長の高野利実医師が答えます。

−−平成28年2月、右乳房に1・4センチ、1・1センチと2つの乳がんが見つかり、右乳房を切除。リンパ節転移も1個見つかり、ステージはU期、ホルモン受容体陽性で、HER2は1+で陰性と言われました。

「術後はどんな治療を」

−−EC療法(抗がん剤のエピルビシンとシクロホスファミドを併用)を3週間隔で4コース受けました。その後、ホルモン療法のノルバデックス(一般名タモキシフェン)を服用していましたが、4年後に骨転移が判明。このときBRCA遺伝子の検査も受け、乳がんや卵巣がんになりやすいとされるBRCA2変異陽性と分かりました。

「その後の治療は」

−−ホルモン療法のフェソロデックス(同フルベストラント)、分子標的薬ベージニオ(同アベマシクリブ)の併用で約2年治療しましたが、骨転移の進行が見られたため、抗がん剤タキソール(同パクリタキセル)治療に切り替えました。病気の勢いが落ち着いた昨年9月、両側卵巣を予防的に切除しました。

「タキソールは効いていたのですね」

−−最初は効いていましたが、骨転移の進行が見られ、BRCA陽性の場合に使われる分子標的薬リムパーザ(同オラパリブ)に治療を変更しました。がんが進行したら、次に候補となるのはエンハーツ(同トラスツズマブデルクステカン)と説明されています。

「エンハーツは、HER2陽性細胞に結合する抗体薬ハーセプチン(同トラスツズマブ)に、抗がん剤を組み合わせた抗体薬物複合体(ADC)という比較的新しい薬です。HER2が『3+』か『2+で遺伝子増幅あり』の『HER2陽性』の乳がんで標準治療となっています。従来『HER2陰性』とされていたHER2が『1+』か『2+で遺伝子増幅なし』の『HER2低発現乳がん』でもエンハーツが有効という臨床試験の結果が示され、標準治療に加わりました。相談者は『HER2低発現』に該当しますので試してみるのがよいと思います」

−−エンハーツは間質性肺炎の副作用があると聞きます。

「間質性肺炎が起きる確率は10〜20%あり、1〜2%の方が間質性肺炎で命を落としてしまいます。そういうリスクがあることも理解した上で、慎重に治療を行う必要があります。治療開始後は、間質性肺炎の兆しを早めに見つけられるよう、こまめにCT検査を受け、せきや息苦しさ、発熱などの症状があったら、すぐに主治医に連絡することが重要です」

「他にもホルモン療法のアロマターゼ阻害薬や、アロマターゼ阻害薬と分子標的薬アフィニトール(同エベロリムス)の併用、抗がん剤のハラヴェン(同エリブリン)、ティーエスワン(同テガフールなど)、ゼローダ(同カペシタビン)なども選択肢。それぞれに期待される効果や起こりうる副作用が異なるので、担当医とよく話し合い、納得して治療を選択することが重要です」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月〜木曜日(祝日除く)午前11時〜午後3時に受け付けます。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

引用元:
乳がんで「HER2低発現」の「1+」 今後の治療は? 〜がん電話相談から(iZaイザ!)