ヒトの生命は精子と卵子の受精から始まる。ところが、受精という段階を経ずに、ヒトの受精卵(胚〈はい〉)に似た「胚モデル」が作製できるようになった。急速に発展する技術は発生や不妊、流産の解明に役立つ。一方、本物の胚にどこまで似せることができるのか、科学技術や倫理をめぐる議論が始まっている。

【写真】胚モデルの作り方のイメージ

 京都大iPS細胞研究所などのグループが5日に、胚モデルで体作りの過程を再現できたと発表(https://www.nature.com/articles/s41586-023-06871-2)。近年、世界中でiPS細胞や胚性幹(ES)細胞を使い、ヒトの命のはじまりを再現する技術の進歩が加速している。

 6月、米英の2チームが、それぞれ着床後の胚を再現した胚モデルを作製したと発表。9月にはイスラエル・ワイツマン科学研究所などのグループが、着床後の胚を模した「完全」な胚モデルをつくったと、英科学誌ネイチャーで報告。受精後14日の状態を再現した。

 このグループは昨年、マウスの胚モデルを特殊な培養装置と組み合わせ、拍動する心臓ができ始める段階まで育てたと発表している。

■加速する研究 日本でも議論始まる

 本物のヒトの胚については、受精後14日をこえる培養を禁じるなどのルールが多くの国にあるが、胚モデルは規制の枠外だ。本物の胚を使うことなく、謎が多いヒトの初期発生の仕組みを研究できる。

 原因不明の発生・発達の障害、妊娠中の薬の影響、不妊や流産の仕組み解明や治療法の開発に役立ち、再生医療につながる発見の可能性もある。

 現在つくられている胚モデルは、培養を続けたとしても胎児にはなりえないとされる。だが、研究の進歩は速い。さらに本物に近づく可能性も考えると、科学的、倫理的にどう位置づけたらいいのか。研究のルールの見直しが必要になる。

引用元:
胚モデル、本物のヒト受精卵に急速に近づく 規制なしからルール議論(Yahoo!ニュース)