11月19日は「国際男性デー」です。明日も元気に暮らしていくために、この機会に男性の健康について学びませんか。東京・丸の内で開催される「国際男性デー健康フェスタ2023」(主催・朝日新聞社、共催・日本メンズヘルス医学会、日本抗加齢医学会、日本抗加齢協会)に関連して、あらためて5つのテーマについて、最新の研究成果やすぐに実践できる対策を専門家に聞きました。2つ目のテーマは男性更年期。井手久満・順天堂大学大学院特任教授(泌尿器外科学)が解説します。動画(約19分)も配信しています。ぜひご覧ください。
人差し指と薬指、どちらの方が長いですか?
「プレゼンティーズム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。出社しているのに心身の健康上の問題があり、なかなか業務のパフォーマンスが上がらないことです。たとえばネットサーフィンばかりして書類仕事に手がつかない。その背景に、男性の更年期障害が隠れていることが最近わかってきました。
興味深いデータがあります。イギリスの証券会社員に対する調査で、テストステロンの高い人は年収が高いという報告があります。
また、テストステロンの高い男性のほうが、子どもをつくる能力が高いことや、運動能力が高いこと、健康寿命が長いということもわかっています。ひとつの指標として、人差し指と薬指の長さの比較があります。これはイギリスの社会学者が数万人のデータから導き出したものですが、テストステロンの高い男性は薬指の方が人差し指より長くなっているといわれます。
お父さんの魅力も減ってしまいます。。。
「お父さんの魅力が減った理由」を娘に尋ねた日本のアンケートでは、最も多いのは「イライラすることが多くなった。短気になった」でした。このほかに、薄毛、口臭体臭、太った、覇気がなくなったなどがあげられました。これらの多くの症状は、じつは男性ホルモンであるテストステロンの低下から引き起こされることがわかっています。医学的には男性更年期障害は「LOH症候群」(加齢男性性腺機能低下症候群)といいます。男性ホルモンであるテストステロンの減少が原因です。精神症状としては、イライラや不眠などが、身体症状としては筋力の低下や性機能の低下などがあげられます。
テストステロンの低下が原因となり、メタボリック症候群、脳梗塞、過活動膀胱、糖尿病、うつなど、さまざまな疾患に進むことが示唆されています。 テストステロンの低下は加齢、肥満、ストレスが原因
テストステロンは一般に、加齢とともに減少します。それに加えて、テストステロンが低下する主な原因の一つは肥満です。日本人男性の約3分の1がBMI(肥満度指数)25以上の肥満であるといわれています。
ストレスもまた、低下させる原因になります。40代後半から50代という男性更年期障害が起きやすい年齢は、非常にストレスにさらされています。社会的に、経済的に、また子どもの教育といったところでも悩んでいるお父さんが多いと思います。それに加えて、喫煙、深酒、不規則な生活。適度な運動は体に良いのですが、激しい運動をすると酸化ストレスとなり、テストステロンが下がってしまいます。
治療は生活習慣の改善や補充療法、運動、温泉、ウナギ、コーヒーも
治療法としては、生活習慣の改善があります。それでは対処できない場合は、病院やクリニックでテストステロンの補充療法を受けられます。そのほかに漢方療法、ビタミン補充や亜鉛などのサプリメント、適度な有酸素運動、筋トレ、ヨガもいいですね。ストレスをやわらげるマインドフルネス(瞑想)も役立ちます。温泉に行ってリラックスすることはテストステロン上昇につながります。 食事療法も有効です。テストステロンが上がるような食材を積極的にとる。有効成分が豊富な食品としては、たとえば、ウナギやニンニクにはアルギニンが含まれています。コーヒーも適度であれば良い。赤身肉にはカルチニンが含まれています。最近、腸内細菌がテストステロン低下を防ぐのに有効であるという可能性も示されてきています。
運動も効果があります。運動とダイエットが血液中のテストステロンのレベルを有意に改善することが、日本人をベースにした研究で示されています。
精子は40年間に50〜60%も減少 亜鉛不足が関係?
驚くべきことに、男性の精子数は過去40年間に50〜60%も減少していることがわかっています。これは世界的な傾向です。その理由は諸説あります。肥満、生活習慣、運動不足、環境ホルモンの影響などもいわれています。はっきりした原因はわかっていませんが、複合的な要因があると思います。
興味深いデータとしては、男性の不妊症患者の約3割は亜鉛が足りない状況にあることです。20代から70代まで、どの年代も亜鉛の摂取推奨量に足りないことが国民健康・栄養調査でわかっています。亜鉛には精子の数を増やしたり、運動率をあげたりする作用があるので、もしかしたら慢性的な亜鉛不足が精子減少と関係しているのかもしれません。
講義のまとめ
この講義のまとめです。残念ながら、年齢を重ねると、だんだんテストステロンは低下します。その低下に伴う男性更年期障害は、ストレス、肥満、生活習慣と関連しており、いろいろな疾患の誘因になることがわかっています。ライフスタイルを改善することによって、男性更年期を予防し、テストステロンを上昇させることができます。現在、唾液(だえき)や髪の毛を自分で郵送してテストステロンを測ってもらうことができます。皆さんもぜひ一度、セルフチェックを試してみてはいかがでしょうか。
井手久満さん(いで・ひさみつ)
順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学 デジタルセラピューティクス講座 特任教授
日本メンズヘルス医学会理事
日本抗加齢医学会理事
1991年宮崎医科大学医学部卒業、国立がんセンター研究所、UCLAハワードヒューズ研究所、帝京大学、獨協医科大学埼玉医療センター等をへて2023年4月より現職。 ロボット支援手術プロクター認定医、日本メンズヘルス医学会理事、日本抗加齢医学会理事等、ロボット手術や男性医学が専門。
引用元:
男性更年期はさまざまな疾患の誘因に セルフチェックで対策を(朝日新聞Reライフ.net)