和歌山県有田市、有田郡3町の「有田地域」で唯一出産ができる有田市立病院(同市宮崎町)。令和6年4月に始まる「医師の働き方改革」で勤務医の休日・時間外労働が制限され、在籍の産婦人科医が1人の同病院では分娩(ぶんべん)が継続できなくなる。市は打開策として医療法人を誘致し、同法人は6年4月、産婦人科診療所を開院する予定だ。関係者の熱意で有田地域の分娩を守っていく。
有田市立病院は産婦人科唯一の医師の退職で令和元年12月から分娩を休止。3年12月、島根県浜田市出身で県外で勤務していた平野開士(はるひと)医師(51)が赴任し、4年2月から分娩を再開した。現在は平野医師1人で分娩を継続している。「医師の働き方改革」では勤務医の時間外労働が年960時間に制限され、分娩を継続するには5人の医師が必要になるが、医師確保のめどが立たない状況だ。
一方で「事業主となる開業医による開院」は制限の対象外となる。有田市は分娩継続のため、制限を受けない医療機関の誘致を検討。千葉県内と東京都内で8施設を運営し、行政と連携した診療所開院で分娩を継続した実績もある「医療法人社団マザー・キー」(同県館山市)と協定を結んだ。有田市が約4億400万円の整備費を補助し、旧市立糸我保育所で「ファミール産院ありだ」の開院準備が進められている。
平野医師が法人の理事に就き、来年4月に開院する診療所の院長にも就任。これにより、分娩を継続することが可能になる。1市3町は1年あたり計1億5千万円の運営費を診療所に補助する。
望月良男市長は記者会見で「有田地域でお産を確保するにはこんなやり方しかないのではないか」と述べた。平野医師は「有田地域のお産を守りたいので、守れる場所があれば120%の力で手を抜かない。経営をサポートしてくれるので診療の方に専念できる」と話した。現在家族を浜田市に残して勤務しているが、「医者人生は有田市で終える気でいる。故郷に帰るときは医者をやるつもりはない。全身全霊を出し切る」と覚悟を示した。
県医務課によると、県内では日本赤十字社和歌山医療センター(和歌山市)を含む8つの公立病院で分娩に対応することができる。有田市立病院以外は来年4月以降も分娩を継続する見通しという。
一方、県内7つの2次保健医療圏でみた場合、有田保健医療圏(有田市、有田郡)、那賀保健医療圏(紀の川市、岩出市)で産科医が不足しているという。
引用元:
和歌山・有田 分娩継続へ診療所来春開院 「医師の働き方改革」に対応(産経新聞)