妊娠時に子宮内にできる胎盤組織から、がんが発生することがある。胎盤をつくる絨毛(じゅうもう)細胞が異常に増殖して生じるため、「絨毛性腫瘍(しゅよう)」という。

 絨毛性腫瘍には「絨毛がん」「胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT)」「類上皮性トロホブラスト腫瘍(ETT)」の三つのがんが含まれ、それぞれ胎盤のどの部分の細胞から発生するかが異なる。

 ETTは、胎盤の細胞のうち、胎児を包む卵膜中の「絨毛膜」という層の細胞から発生する。

 いずれも罹患(りかん)者数が少ない「希少がん」で、最も多い絨毛がんでも年間20〜30人程度。最も少ないETTは、日本産科婦人科学会のデータによると、2016年から22年の間に、全国で6例しか報告されていない。

 ETTは01年に初めて海外の研究者によって、それまで知られていたものとは別の特徴を持つ絨毛性腫瘍として提唱され、臨床や研究の歴史も浅い。

 絨毛性腫瘍に詳しい和歌山県立医科大学の井箟一彦(いのうかずひこ)教授(産婦人科)によると、絨毛性腫瘍は「胞状(ほうじょう)奇胎(きたい)」という異常妊娠や普通分娩(ぶんべん)、流産など、何らかの妊娠をきっかけに胎盤組織ができると、ごくわずかな人でその胎盤由来の細胞が悪性化し、発症する。

きっかけは妊娠 流産や異常妊娠でも
 胞状奇胎が見つかった人を経過観察するうちに見つかる場合が多いが、流産や出産後の不正出血などで受診し、見つかることもある。

 妊娠から発症までの期間は数カ月から数年と様々。絨毛がんは進行が早い場合もあるが、井箟教授は「ETTやPSTTは比較的進行が遅く、妊娠から数年たって見つかることがある。中には妊娠から10年ほどたってから見つかった例もある」と話す。

 絨毛がんは抗がん剤がよく効き、肺や脳に転移があっても、5年生存率は9割ほど。一方で、ETTやPSTTは抗がん剤が効きづらい。

 そのため、手術での子宮の全摘が第一選択肢になり、子宮を温存する方法が確立していないのが課題だという。

 症例数が非常に少ないことから、ETTやPSTTを鑑別できる婦人科腫瘍の専門医や病理医は、全国でも限られている。

 診断には腫瘍の全体や一部を切除して病理検査をする。出産後などに胎盤組織が子宮内に残る「胎盤遺残(いざん)」との鑑別が難しく、この疾患が疑われる患者がいる場合、詳しい専門医がいる大学病院などに紹介することが望ましいという。(足立菜摘)

引用元:
胎盤から希少がんが… 妊娠から数年後に見つかる場合も(朝日新聞)