不妊治療における公的医療保険の適用が拡大されてから、1年が経過した。年齢や回数に制限はあるものの、人工授精や体外受精といった、これまで自由診療だった治療も患者の自己負担が原則、治療費の3割になった。実際、患者の金銭的な負担は減っているのだろうか。不妊治療体験者を支援するNPO法人Fine(ファイン)が実施した「保険適用後の不妊治療に関するアンケート2022」では、支払っている医療費が保険適用前と比べると「減った」と感じている人は43%、「増えた」と感じている人が31%との結果になった。医療費の負担が減った分、患者が増え、医療機関での待ち時間がより増えるなど別のかたちでの「不都合」が出ていることも分かった。

 保険適用になって「良くなった」と感じている点としては、「経済的に治療が始めやすくなった」ことや「支払う医療費が少なくなった」「心理的に治療が始めやすくなった」など経済的、心理的負担の減少を挙げている人が多かった。半面、「悪くなった」と感じている点としては「医療機関での待ち時間が増えた」「混雑することで、簡略化されていることが多くなった」ことや「保険適用範囲が分かりづらい」「医療機関の基本の診察料が見直された」といった声があった。

 保険適用によって国の助成金制度は廃止に。そのため、保険適用外の注射や薬を使用する場合は、全ての治療が自由診療となってしまい、実質的に経済的な負担が増えたという人も一定数おり、今後も制度の見直しなどが求められる状況だ。

 では、不妊治療における保険適用の拡大について、医療機関はどのように見ているのだろうか。前橋市の産婦人科医院「横田マタニティーホスピタル」の横田英巳院長は「不妊治療がより身近に感じる治療にはなっているように感じる」と話す。医療機関側としては、保険適用によって、全国的に治療の標準化に向かっていくのではないかとみる。

 一方で、「患者に合ったオーダーメイドの治療ができなくなっているということでもある」とも指摘。保険適用が認められた注射や薬を使用することで、全ての治療が自由診療となり、実質患者の負担が増えてしまうケースも少なからずあるという。「(保険が適用される治療と、自費の治療を一緒にできる)混合診療がある程度認められるようになれば、患者にとってもわれわれにとっても一番良い方法ではないか」と期待する。

 加えて、横田院長は、保険適用外の薬を使って成果を出す試みなど、新しい不妊治療の研究にブレーキがかかってしまうことを懸念し、「日本の不妊治療が、足踏み状態になってしまうのではないか」と不安を口にする。「そういう意味で、標準化はメリットでもあるけれど、デメリットでもある。患者に見合った治療を提供するのがわれわれの使命。偏り過ぎないように、不具合が生じている部分は改善されるように、訴えていきたい」と話した。

引用元:
負担は減った?不妊治療の保険適用拡大から1年 患者や病院の変化を探る(上毛新聞)