精子や卵子を使わずに、受精卵から胎児になる初期の過程の「胚」に似た組織を作ることに成功したと、米エール大と英ケンブリッジ大のチームが発表した。それぞれの論文が28日、科学誌ネイチャーに掲載される。いずれも人の幹細胞から人工的に作った「胚モデル」で、先天性疾患の原因究明などに役立つ可能性がある。将来的には人工的に人をつくる技術につながる恐れもあり、生命倫理の観点で議論を呼びそうだ。

米エール大の研究では、人の幹細胞を特殊な環境下で培養すると、卵子と精子を使わずに受精後9日目頃の胚に似た構造を確認したという。

 この胚モデルは細胞分裂によって、胎児や栄養分の元となる立体的な細胞塊に成長。筋肉や消化管などに発達する前段階の特徴もあり、チームは「人の胚の主要な特徴を試験管内で再構築した」とする。一方、胎盤の元になる細胞は含まず、そのまま培養を続けても胎児に成長しないという。

 胚モデルを巡っては今月中旬、イスラエルや中国のチームも査読前の論文を公開した。国際学会は子宮に移植することを禁止しているが、先天性疾患や不妊の原因究明に役立つと考えられており、世界で研究競争が激化している。

人の受精卵の培養期間は、臓器などの形成が本格化する14日以内とするルールが、日本など多くの国で採用されている。一方、胚モデルは研究が先行し、詳細なルール整備が追いついていない。「生命の 萌芽ほうが 」とされる受精卵に比べて倫理的な課題が少ないとして、14日超の培養を容認すべきだという声もある。日本でも、内閣府が規制の必要性について議論を本格化させる予定だ。

  北海道大の石井哲也教授(生命倫理)の話 「研究が進展するほど、人工的に人を作る懸念が増す。研究者は胚モデルの作製目的を説明し、受精卵との違いを明確化する責任がある」

引用元:
精子や卵子を使わず「胚」に似た組織の作製に成功…エール大とケンブリッジ大が発表()読売新聞オンライン