出産を予定する女性の大きな悩みの種の一つは、妊娠中に飲める薬が分からないことだ。妊産婦の切実な相談に的確に答えられる薬剤師を増やすため、石川県薬剤師会は六月と七月に、服薬指導の技術向上を目指した研修を開く。担当者は「服薬の相談は多い。行きつけの薬局で不安を取り除けたら、妊娠をあきらめる人は減るはず」と力を込める。(戎野文菜)
「どの薬局でも相談気軽に」
市販の薬の添付文書には「使用上の注意」として妊産婦の服用時は「医師または薬剤師に相談を」と書かれている場合が多い。担当者は「安全性を確かめれば使える物もあるが、使えないとだけ伝えることも多い」と指摘する。
研修を提案した今庄恵子常務理事は「もう一歩踏み込んで、本当にだめかを調べる手法の検討を」と求め、最新の知見から判断できるよう「薬剤師は一生、自分で研さんを積まなければならない」と強調した。
県薬剤師会が今年行った調査で、県内の薬剤師に妊産婦の相談に自信をもって答えられるかを十点満点で聞いたところ、回答した百五十五人の中で最も多かったのは、自信があるともないとも言えない「五点」の四十五人(29%)。
一方、自らの理想を「十点」としたのは八十九人(57%)いた。
薬剤師会の藤原秀範副会長は「意欲が高い薬剤師は多い。研修でステップアップし、医師の処方箋がなくても、どの薬局でも気軽に相談できるようになれば」と期待する。
研修の背景には、深刻な少子化もある。薬の服用を理由に妊娠をあきらめたり、薬の影響を心配し妊娠を避けたりしていたら(年齢的に)出産しやすい時機を逃してしまったという人は少なくないという。
研修は六月二十五日と七月二十三日の二日間。県内外の薬剤師が受講でき、専門知識を持つ薬剤師、医師、大学教授らが講師を務める。妊婦が飲んだ薬が体内で吸収、排出されるまでの動態を計算し、胎児にどう影響するか推測するスキルを磨く。妊産婦とのコミュニケーションのポイントも学べる。興味がある人には、さらに専門的な講座も紹介する。
つわり中の服薬 悩み救われた 妊娠後に病気判明
「病気や薬が子どもの発達に影響したらどうしよう…」。二人目の妊娠後に甲状腺疾患が見つかった石川県野々市市内の四十代女性は、不安だった当時を振り返った。
薬は朝食後に飲むよう言われたが、つわりで気持ち悪く、そもそも朝食が食べられない。薬剤師に相談しても歯切れの悪い返事。どうすればいいか分からず、結局、薬を飲むために頑張って食べ物を口に入れた。
助けてくれたのは、たまたま利用した薬局で出会った妊産婦の服薬指導に詳しい薬剤師だった。「つわりがひどいなら(食事をとらなくても)水分摂取だけで飲んで大丈夫」と教えてくれた。
病気の原因やメカニズム、服薬リスクの解説も分かりやすく、今では「健康に関することは何でも相談できる存在。子育て中も安心して薬を使える」と話している。
引用元:
妊婦と薬 不安に答える 石川県薬剤師会 指導技術向上へ研修 (中日新聞)